バス釣り太郎

ストップ・メイキング・センス 4Kレストアのバス釣り太郎のレビュー・感想・評価

5.0
最高なのは百も分かっていたから、今回はバンドでなく制作陣の意志に注視してみよう!!💪とか意気込んでたのに、気づいたら体は音に反応している。結局はデイヴィッド・バーンの天賦の才にひれ伏すしかないのだ!
家で音源だけ聴いていると、彼が不世出のヴォーカリストである前に最高の演出家であることを忘れそうになる。Talking Headsほど映像で価値の上がるバンドも早々いないのに。4K、IMAXでブーストされた神経質風の歌声(ほんとうにサイコキラーなのか?)、痙攣ダンス、ステージ空間デザインに、今まで以上に魅せられる。しかもその全てはまるで天性の即興センスで創り出したかのように見せた完全な計算であり、更に言えばそこに嫌味がまるで無いのがほんとうに素晴らしい。天然にみせた策士は女性ならば恐ろしいが、バーンの場合は喜んで彼の掌の上で転がされようじゃないか!〝This Must Be the Place〟でライトスタンドと戯れるバーンのロマンチックさに、どんな恋愛映画のワンシーンも勝てやしない。

参加しているツアーメンバーの布陣を見ても分かるように、70's後半からワールドミュージックをいち早く取り入れ大名盤『Remain in Light』を世に出した功績はあまりに大きくて(ブライアン・イーノの功績でもあるけど)、改めて一向に称賛されなければならないと思う。バーンのことばかり書いてしまったけれど相変わらずティナのベースラインはいつ聴いてもただひたすらに素晴らしいし、一曲だけトムトムクラブになる(しかもそれはバーンのデカスーツ着替えのための束の間の休息)ときゃ絶対泣いてしまう。

あと、ほんの少し残された理性で作り手の目線に立って分かった事として、これが完全なる「編集の映画」であって、虚構の、しかし実際のライブ以上のものに格上げされていることは覚えておきたい(誰でも分かる)。ジョナサン・デミありがとう!