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幌馬車のいののレビュー・感想・評価

幌馬車(1950年製作の映画)
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主人公のうちのひとりの名前が「トラヴィス」だということを知り鑑賞。ストーリーも思いのほか(失礼)面白かった。馬商人ふたり(トラヴィスとサンディ)がモルモン教徒およそ60名の幌馬車隊の大移動を護衛する。そこに旅芸人グループが加わり、ギャング一味が強引に加わり、ナバホ族と出会い・・・といったように、片道通行の移動の列に、いろんな人達が足されていく。ギャング一味の拍車の音が効果的で、その音だけで彼等の存在が示されるのもいいと思う。馬たちは皆イキが良く、演技を超えた演技で本当に素晴らしい。一行が川をみつけてみんなでわーい!ってなるときに、馬ちゃんたちも本当にうれしそう。一行のおばあちゃんがなにげに良い味を出していて、彼女が角笛吹いたとき、あまりの音色に馬ちゃん2疋が後ろでびっっっくりしていていたのをわたしは見逃しませんでした。


この映画を観ながらたびたび『ミースク・カットオフ』のことを考える。ライカートはもちろんこの映画を参考にしただろうと思う。幌馬車は、険しい山や崖を登るのも大変だけど、下りは更に大変で、映像でもそれはとても伝わってきた。


惜しむらくは画質の劣化で、背景がほとんど曖昧でぼやけてしまっていた。もしかしたら背景は舞台のスクリーンみたいなものだったのでしょうか。よくわかりません。テレビ画面では見るに堪えなくて途中で断念。タブレットではじめからやり直した。DVDならどうなのかわからないけど、修復版があるなら観てみたいな。画質が良ければ、ハイスコアにしていたと思います。



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トラヴィスについて(自分の雑多な感想と書籍からのメモ)
(『パリ、テキサス』『タクシー・ドライバー』『幌馬車』)

トラヴィスといったら長いことわたしは『パリ、テキサス』一択でしたが、2018年に『タクシー・ドライバー』を初鑑賞して以来、トラヴィスはわたしにとってはふたりになりました。それは、あながち間違った感想ではなかったようで、『パリ、テキサス』の主人公の名前は、『タクシー・ドライバー』に由来する説あるらしいです。そして、今作『幌馬車』の主人公とも一致するのはやはり何かあるようだ。


『幌馬車』のトラヴィスの相棒はサンディ。『パリ、テキサス』のトラヴィスは映画の冒頭、砂漠のなか、風に舞う砂粒のように移動する。


トラヴィス(Travis)は、「移動する」という単語も想起されるけど、この名前はもともとフランス語起源で「越境する」ことをさす。そこから転じて「料金所係員」、つまり越境する者を管理する側もさす。これも『パリ、テキサス』全体の内容、とくにヒロインとの関係に照らすと興味深いとのこと


参考文献
川本徹『フロンティアをこえて ー ニュー・ウェスタン映画論』、森話社、2023年 50頁、64頁
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