ビンさん

サンパギータのビンさんのレビュー・感想・評価

サンパギータ(2023年製作の映画)
3.8
サンパギータとはフィリピンの国花で「永遠の愛を誓う」という花言葉がある。
本作は日本へモデルの仕事にやって来たフィリピンの女性と、日本人フォトグラファーとのラブストーリーである。

エミリア(小池樹里杏)はフィリピンから日本へモデルの仕事で来日するも、理想と現実の違いに戸惑う日々を送る。
その中で未来(内田裕大)というフォトグラファーと出会う。
未来はエミリアの持つ魅力に惹かれたのだった。
エミリアの日常をカメラに収める未来。
しかし、言葉の壁、習慣の壁が二人の間に立ちはだかり、関係は脆くも崩れてしまう。
やがて時が過ぎ、未来はエミリアの写真で個展を開くが、心は満たされない。
意を決してフィリピンへ向かうのだった。

正直、ベタなラブストーリーである。
しかし、エミリアと未来の関係が、なんというかつかず離れずの微妙な関係で、これがよくあるのはすぐに深い関係になって泥沼化が増す、という展開は本作にはない。
故に淡白な印象もあるが、そこは本作の重要なテーマである異国の者同士の言葉の壁、習慣の壁なのだ。

希望を持って日本にやって来たエミリアだが、異国の地ということで、不安な部分が多々あって、なかなか思うように進めないもどかしさがある。
これは前半の日本が舞台であるパートの日本人目線ゆえのシークエンス。
これが後半立場が逆転する。
エミリアを追ってフィリピンに来たものの、言葉が通じず苦悩する未来を描く、フィリピン側目線のシークエンス。
この対比がよく描けていたと感じた。

互いに異国の地で自分の思いが100%通じないことへのもどかしさ、悔しさ。
しかし、重要なのは月並みな表現だが、相手を思いやる心が重要なのだ。
本作のテーマはそこにあると感じた。

のめり込んでしまった珍作(笑)『復讐のワサビ』のヒロインとはまた違った魅力を持つ、エミリア役の小池樹里杏さんは、自身も日本人とフィリピン人のハーフということで、本作では三室力也さんと共同監督をされている。
個人的に本作と『復讐のワサビ』しか出演作は知らないな、と思っていたら、なんと4年前に同じくシアターセブンで、藪下雷太監督の『BOY』と同時上映だった同監督の『吉祥寺ゴーゴー』(怪作にして快作‼️)のゴーゴーガールの一人だったではないか‼️
いまさらながら知って驚愕しているのであった(笑)

また、未来役の内田裕大さんも、前半と後半の立場が逆転する戸惑いを巧みに演じてらっしゃった。

エンドロールで提示されるフォトが、本作のテーマのその先を語っていて、そこに流れるテーマソングがまた本編にマッチしていて、観終わった後も清々しい余韻が残る作品だった。

舞台挨拶には本作のプロデューサー飯塚欣司さん、三室力也監督、小池樹里杏さん、内田裕大さん、主題歌を担当したSOONERSのガジャGさん、KWANIさん、keiさんが登壇。
KWANIさんの演出で劇中の1シーンを樹里杏さん、内田裕大さんに演じてもらって主題歌につなげるという、粋な趣向で場内が盛り上がった。素晴らしき哉‼️
ビンさん

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