KnightsofOdessa

サムサラのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

サムサラ(2023年製作の映画)
3.0
[ラオスの老女、ザンジバルの少女に転生する] 60点

2023年ベルリン映画祭エンカウンターズ部門選出作品。ロイス・パティーニョ(Lois Patiño)長編三作目。英題"サムサラ"とは輪廻転生を指している。本作品は二部構成になっており、前半はラオス、後半はザンジバルを舞台としている。ラオス篇では数十人のティーン僧侶が共同生活する風景が描かれ、その一人ベアンがある使命を帯びた少年アミドに出会うところから始まる。その使命とは高齢で目が悪くなってしまった老女にチベット仏教の経典を読み聞かせることである。その言葉を道標のように、映画は真っ暗なインターバルに入り、生きても死んでもいない、次の生まれ変わりを待つ"バルド"という状態を観客と共有する。目を覚ますと、そこはザンジバルだった。前半と後半で撮影監督が変わっており、見える風景もまた変わってくるという感覚が良い。ラオス篇のマウロ・エルセもザンジバル篇のジェシカ・サラ・リンランドも、オリエンタルな視線や観光的な視線を一切廃し、まるでそこで共に生活しているかのような親密さを以て映像を構築していく。人は動物に転生するのを嫌がるが、それは人間状態で動物たちに酷いことをするからだ、という老女の言葉の通り、本作品では様々な生き物が、様々な魂の通り道のように配されていて、どこかミケランジェロ・フランマルティーノ『四つのいのち』を思い出させる。
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