真一

映画 ○月○日、区長になる女。の真一のレビュー・感想・評価

3.4
 リベラルで進歩的な国際NGO職員の岸本聡子さんが、東京都杉並区長選で自民系現職に勝利するまでの奮闘を伝える、ファンクラブ向け映画。初めから岸本さんのような方に勝ってほしいと期待する反自民の人ーかく言う私もそうなんですーは楽しめますが、相手候補の主張や選挙戦の争点についての描写が乏しいため、リベラル界隈以外の方々の共感は得にくいかもしれません。

 内容的には、杉並区在住のペヤンヌマキ監督が、推しの岸本さんの選挙戦に密着し、その素顔を伝えるというドキュメントです。監督は、自民系の田中区長のままだと、道路延長工事によって自分が住むアパートが取り壊されると知ります。「これは大変だ、阻止しなければいけない」と考え、初めて選挙運動に参加。区政刷新を目指す市民グループの一員として区内を走り回り、ついには岸本さんを新区長に押し上げます。

 「名もない市民が一つになって自民系を打ち倒した!みんなも声を上げよう」。作品からは、こんなメッセージが聞こえてくるような気がします。

 ただ、実際は、立憲民主党や共産党からそれなりの組織的支援を受けているのではないかという印象を受けました。選挙戦の幟には、岸本さんに合わせて立民の吉田はるみ参院議員の写真が載っていたし、選挙事務所の壁には共産党の山添拓参院議員らの必勝色紙がかかっていたからです。
 選挙戦で各党の支援を得るのは当然の話です。野党共闘、大いに賛成です。それだけに本作品でも、そのプロセスに触れてほしかった。「素人の手づくり選挙」イメージの発信に必要以上にこだわったとすれば、ちょっと残念です。

 願わくば、リベラル嫌いな保守系の人や、政治に無関心な人が見ても「なるほど、岸本さんでないとダメなのか」と思わせるような中身にしてほしかったです。「道路工事?反対!」だけで「岸本候補しかいない」という結論に持っていくのは、やや強引な印象を受けました。

 と、いくつか注文をつけましたが、いずれにせよ、岸本さんには頑張ってほしい。お隣の世田谷区から声援を送ります。
真一

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