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オリオンと暗闇のhasisiのレビュー・感想・評価

オリオンと暗闇(2024年製作の映画)
3.7
米国の小学校。
11才のオリオンは5年生。ぼっちで大人しくて不安に悩まされている気弱な男の子。
プラネタリウム行きの遠足が迫っているが、バスが事故する可能性に怯えて、先生に許可書が出せない。
自宅の子供部屋で過ごす夜。闇に怯え、間接照明を沢山つけて寝床につくが停電。恐怖に打ち勝とうと自分を振るい立たせていると、黒いフードを被った大柄な男が現れて、「俺は暗闇だ」と名乗った。

監督は、ショーン・シャルマッツ。
脚本は、チャーリー・カウフマン。
2024年にNetflixで配信されたファンタジー・アドベンチャー・コメディ・アニメ映画です。

【主な登場人物】🌆🌠
[暗闇]相棒。
[いい夢]ピンク。
[オリオン]主人公。
[雑音]ロボット。
[サリー]大人しい女子。
[睡眠]マペット。
[静寂]タンポポネズミ。
[ティコ]とんがり。
[眠れず]ハチドリ紳士。
[パパ]髭。
[ヒュパティア]娘。
[ママ]眼鏡。
[リサ]元気な女子。
[リッチー・パニチ]やんちゃ。

【感想】🌃🌉
製作会社は『カンフー・パンダ』のドリームワークス・アニメーション。
原作は、エマ・ヤーレットが2015年に発表した児童書『オリオンとクラヤーミ』

シャルマッツ監督は、1980年生まれ。カリフォルニア州出身の男性。
テレビの短編を経て、長編は初。
専門はアート部門で、アニメの外観を整える仕事をしている。
『アングリーバード』や『スポンジ・ボブ』など。
ざっくり説明すると、監督の手伝いです。

脚本のカウフマンは、1958年生まれ。ニューヨーク出身の男性。
代表作は『マルコヴィッチの穴』
アイデンティティ・クライシス。死。人生の意味などがテーマとして浮上しやすい。
それを哲学と、超常的な体験で表現するスタイル。
アニメ化は『アノマリサ』以来の2作目。

監督と脚本家の年齢が離れている珍しいコンビ。

🌌〈序盤〉💥🚌
オリオンは純粋で敏感。ボッチ同士の気持ちを想像する優しい子。
コメディの脚本家が小学生に戻って、いまの子供たちにメッセージを伝えるアニメで、
方向性は昨年の『レオ』とよく似ている。

オリオンは、性格はいいが気が小さい。敏感すぎて精神は崩壊寸前。本人は淡々と冷静だが、不安障害から見えている世界が上手く映像化されている。
趣味はイラストで、スケッチブックを持ち歩いている。
苛めっ子にとられて、中身を確認されて、いじられる。

そこから相手がこちらに持つ印象や、心理状態が読み取れる。
わたしもFilmarksをはじめる前は、テキストと同じくらい絵も描いていた。学生時代はスケッチブックを持ち歩いていたので、同じシチュによく出くわしていた。

親に恵まれているのを隠していないのは好感が持てる。
下手に不幸に描いても、人格から読み取れるので、ありのまま。小細工はしない方がいい。

🔦暗所恐怖症。
オリオンは電気つけて寝る派。
わたしは、うたた寝している人がテレビや電気をつけっ放しだと消して回るタイプ。
夜と暗闇が大好きなので理解するのは難しい。
(消すと怒る人もいるし)

🌌〈中盤〉🤖🐑
闇への抵抗感が薄らぐ課程が、大人らしくてしたたか。
印象操作で巧みに子供の心理を誘導している。
けど、相手が知的で悪意のない人だったら、操られても気持ちいい。

画面の奥行きを活かした、浴びるような映像が心地いいが、闇の場面が長いので、頭がぼーとしてくる。情報が洪水のように流れてくるが印象は残りにくい。
まあ、夢と同じと考えれば自然ではある。

語り手の登場で眠気覚まし。本作の場合は、外野のちゃちゃが上手く機能している。本編だけだと、一本調子で寝てしまうだろう。

🌌〈終盤〉🐝🚽
世代を越えて紡がれる物語。
夜と眠りの大切さを紐解いてゆく。
システムの縛りから解放される感覚が気持ちいい。

会話劇から一転。アクションで子供を楽しませる山場に。
仲間たちの役割分担が明確なので、展開を予測する面白さもある。
ただ、悪夢が押し寄せてくるので結構怖い。

……なんか、エピローグが追加シナリオのように長かった。

【映画を振り返って】🔫🛸
シュールリアリズム。
人の暗部と語り合う普遍的な物語と、解放感のある映像と音楽。闇が広がる飛行シーンのように、心地いい場面がいくつも収録されているので満足感が高い。
不気味なキャラクターたちが可愛く、一晩中「悪魔全書」を眺めているような闇の住人にお勧め。

🗣️猛烈独り言。
会話劇にファンタジックな映像がつけてある。夢の世界を見事に映像化してあり、監督の実力は称賛するが、いかんせん単調。
暗い画面の中でダミ声の小父さんと子供が喋り続ける珍しい映画。
一夜の出来事が90分間延々とつづくので、まさにナイトメア。
今回のテーマである「暗闇への恐怖を克服」を表現するため、と割り切るのが吉。
一応、30分ごとに絵変わりはする。大御所と新人監督の連携は良好で、視聴者を飽きさせないための工夫が施されていた。

😴Zzzz。
脚本のカウフマンが、ちょっと自分に厳しすぎる印象を受けた。自分に厳しい=他人に厳しい、ので居心地はそこそこ。
気持ちよさは健在だが、心の病気がリアルで、本人の症状のように思えて怖かった。病が感染したら癒しどころではない。
(お前が言うな)

見えている世界に親近感を覚えるから、貴重な存在。
印象的な場面を描く時の言葉のチョイスが好きで、勉強になる。
話が逸れるが、先輩の乱暴な言葉の連続に心が疲弊していたので癒された。
「会社のため」と枕言葉をつける人は、言論弾圧が集客数の増加に繋がるのか、一度考えてほしい。

📘原作は、眠りへと誘うための絵本。
怖い物リストから暗闇との出会い。それから中盤ぐらいまでの内容。
仲間たちは出てこないが、2人で冒険するのが楽しいし、眠りに一番大切な“安心感”を持っているので魅力的。
映画化にあたり、女性の包容力が失われたのはやや残念ではある。

🛏️寝る子は育つ。
人は人生の3分の1は寝ている。
スポーツ選手だと、筋肉を育てる昼寝までがトレーニングの一環。
人は死ぬまで育つので、適正な睡眠時間を把握して、できるだけ減らさないように。
脳も生まれ変わるから睡眠はボケ防止にも有効。
寝る直前の精神状態も重要なので、ストレスを受けてから眠りに入るのは避けたい。

明るさには本来、体を起こすための効果がある。
よって、電気が消せれば睡眠の質は向上する。
間接照明にするだけでもリラックスできるので、本編でのオリオンの最初の行動が、実は答えだったりする。
ロジックはしっかりした映画なので、観た人がぐっすり眠れて、1日が無事にリセットできるといいですね……。
「それでは皆さん、おやすみなさい。よい夢を♪」
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