寝耳に猫800

ゴースト・トロピックの寝耳に猫800のレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
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一文で説明してしまえば、おばちゃんが電車で寝過ごして終電無くして夜を彷徨う一夜を描いた映画なのだが、のんびり撮っているようで意外と編集のテンポにメリハリがあるので観ていられる

最初はおばちゃん寒そうだな大丈夫かなとかそういう目で見ていたが、途中から、自分は本作の中にところどころに「おかしみ」を観た、それは主人公の女性が徹底的に真顔だからだと思う、ATMの残高不足のときの顔とか、家まで車で送ってくれる女性との会話とか、未成年の娘が夜中に友人と飲んでいるところを目撃してしまい、彼女らに酒を売った店をおまわりさんにすぐチクったりとか、真夜中の病院に忍び込んだりとか、本人は徹底的にマジなんだがそんなに真顔かつノーモーションでやられると観ているこちらは笑ってしまう

ファーストカットとラスト前カットのリビングの映像、そしてラストシーンでだいぶ印象が変わる気がする、本作の直前に同じ監督の『here』を観たが、この監督は夢なのか妄想なのか分からない唐突なカットや、フィックスでカメラを置いておいて光の加減で画面が変わっていくカットが好きなのかもしれない、その辺りは観ているこちらに委ねられているが投げっぱなしな感覚はないのでバランス感覚が優れているのかもしれない

路上生活者の男性を揺すり起こした直後におばちゃんとレスキュー(警察?)が2人並んで救急車の光に照らされながら前を向いて会話しているところにパッと切り替わるところが好きだった

なんとなく、ケリー・ライカート『ウェンディ&ルーシー』を思い出した