リプリー

毒娘のリプリーのレビュー・感想・評価

毒娘(2024年製作の映画)
4.3
内藤瑛亮監督作品のキャラクター原案が押見修造さん!? と最初の特報を見たときはそれはもう嬉しくて公開を心待ちにしていた。

そして、案の定今回も良かった。最高だった。
すべてが気に入らず、でもどうにもならないという十代という鬱屈した時期に猛烈に負のパワーを持った存在(この場合は言うまでもなく、ちーちゃん)に出会ったら自分ならどうなっていただろう…と本気で考えてしまう。
本作は道徳的にいけないシーンになるほど、音楽は高鳴り、観客の感情を否が応でものせてくる。「ほら? 楽しいでしょ? ずっとこうやってムチャクチャにしたかったんでしょ?」と囁きかけてくる。でも僕らは大人だから言うまでもなくこれはいけないことだと知っている。
この不思議な高鳴りと罪悪感に引き裂かれそうになる瞬間。これぞ内藤作品独自の魅力であり、同時に押見修造さんも度々描いてきたものでもある。
そして表面上の幸せというものに対する欺瞞。
一見して優しい風、でも実は権威的でしかない男性からの抑圧を描いているという点では実に現代的だし、クライマックスの展開はそんなテーマすら超えて大人というものに対しての不満、不信を貫くちーちゃんはダークヒーロー的にすら見えて大変魅力的だった。
そして相変わらず内藤監督は百合がお好きだな、と。
手をクロスさせてケーキをパクつくとか、この人ならではの発想な気がする。