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WILLのnetfilmsのレビュー・感想・評価

WILL(2024年製作の映画)
3.5
 例え取り返しのつかない罪を犯したとしても、やはり一発レッドカードな社会は精神衛生上もシステム的にも心情的にもよろしくない。再生するチャンスを与えて欲しい。人は罪を犯す生き物だから、誰だって必ずや間違いを犯す。要はその間違いの後の対応が人間力であり、人間の本質を示すのだと思うが、いやはやそれでも言ってることとやっていることがこれだけ折り合わないのも珍しい。始まりはモデルとしてスタートし、やがて俳優としてとんとん拍子で数々の映画に出た。その中には私が大好きな監督の作品が少なからずある。私の見立てによれば、東出昌大という人は今若い世代の中で一番芝居が下手な役者である。然しながらそのヘタクソさがありながらも、渡辺謙の娘さんの杏ちゃんと結婚し、やがて3人の子供をもうけた。その時点では杏ちゃんの伴侶という役回りかもしれないが、3人の子供を育てる子煩悩なイメージで評価はどんどん跳ね上がり、いつの間にか実力不足の芝居には目を瞑ろうという暗黙の了解が醸成されていたように思う。然し東出昌大は妻や子供と向き合わず、調子に乗った。出会いは濱口竜介の映画だろうが、不倫の代償はある種の汚点となりスクリーンへ侵食し、永久に刻まれる。

 私は何も東出昌大に聖人君子たれと言っているわけではない。人それぞれの生き方があり、夫婦のことは夫婦にしかわからない。然しながら都会で週刊誌に追われ、突発性鬱を患ったドキュメンタリーの主人公が山へ逃げて行くのは流石に卑怯ではないかとも思う。自分への支持が不倫報道を理由に一転して誹謗中傷に晒される。叩いているのは不特定多数の匿名で卑怯な連中だ。然しながら対話にはちっとも応えず、突然田舎に引っ込む東出の行動も、逃げたよねという嫌な予感を与えるのも事実である。撃った鹿の死体を解体する東出の手捌きは随分手慣れたものに見え、私には到底出来そうにない。コンビニで食べる弁当は味がしないと述べる東出の感想は一見理に叶うけれど、エリザベス宮地の都合の良い編集なのかはわからぬが、ここにはどこか取り繕った東出昌大しか見えない。本来ならばMOROHAの主張と東出昌大の里山思想とは水と油で、容易にマリアージュすることのない表現の徒然がここでは奇妙なシンクロを果たす。しかし杏ちゃんも彼女が育てた3人の子供たちも、父親が「遺言」とまで話すこの映画を観て、何かしら辛い気持ちにならないだろうか?動物同士の食物連鎖を語る前に東出昌大には、子供たちの為に全力で生きる真っ当な人であって欲しかった。地元の人たちも彼自身が有名人でなければこれだけ協力しなかったはずで、ある種奇妙な協力関係をベースに、一歩前に踏み出したように見えるがその本質には「う~ん」という釈然としない想いを抱く。
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