強い

ドイ・ボーイ:路地裏の僕らの強いのレビュー・感想・評価

4.0
タイはチェンマイ。異性愛者でありながら男娼として働くミャンマーからの不法移民のソーン、ソーンの客で警察官のジー、恋人を警察に殺された活動家のウット、の三人の人生が絡み合う。

コロナのような緊急事態が発生するといとも簡単に崩壊してしまう生活。やれ旅行が出来ないだの、学校が休みだのと、そんなぬるい問題ではなく命の危機にまで発展してしまう。

生活に使うはずだった金をパスポートの取得に使い、生活がままならなくなってしまったソーンは目先の仕事に飛び付いて不法就労で逮捕されてしまう。
男娼としての客だったジーとの取引により、活動家・ウットを捕らえミャンマーへ送る事に協力する。

タイの社会情勢や権力関係だけではなくミャンマーの少数民族と国軍との内戦/徴兵と、クィアと性産業、貧困、不法就労、不法移民、人身売買。山積みの問題が生い茂る草木のように放置されている。
どこかに救いがあるかと血眼で探すけれど、あまりに僅かで割に合わない。ありきたりなバッドエンドよりもずっと重く、救われたはずの命は軽い。
ラストの解釈をずっと考えている。

越境、上層部からの指示、激しい講義活動。
何かを越えてその先にあるものは不明瞭か。

二重三重に重なったフィルムのようにカットが場面を繋ぎ、愛が視える。水が流れて、青々とした山が燃え、その頭上に広がる空は美しい。美しければ美しいほど悲しくなる。

タイ…………!(嗚咽)
強い

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