くまねこさん

戦場のピアニスト 4Kデジタルリマスター版のくまねこさんのレビュー・感想・評価

4.4
「戦場のピアニスト 4Kデジタルリマスター版」2003年公開映画を角川シネマ有楽町で初鑑賞。予備知識ほとんどなし。

ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの自伝を名匠ロマン・ポランスキー監督が映画化。カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。

1939年、ドイツ軍のポーランド侵攻によって第2次世界大戦が勃発し、シュピルマンは家族とともにワルシャワ・ゲットー(ユダヤ人隔離地域)に強制的に移住させられ、隠れ家を転々と変えながら、飢えや無差別殺人に脅える生き地獄の日々。

主人公シュピルマンの生き様は、ロマン・ポランスキー監督の両親の戦争体験ならびに青年期の生き様そのものであり、主人公に自分の人生を投影しているのは明らか。

中盤までの続くナチスドイツ軍の数々の蛮行、残虐な殺人の連続は本当にゲンナリでした…

終盤、突然現れるドイツ軍のホーゼンフェルト大尉(トーマス・クレッチマン)に導かれ、シュピルマンが演奏したショパンの「バラード第1番 ト短調 作品23」が素晴らしく本作のクライマックスだと思う。

音を出すことも憚れる厳しい状況の中でも常に彼の頭ではピアノが流れており、抑えつけていた感情の発露があのような演奏として現れた素晴らしいシーンではないだろうか。

その後、ジャムとパンを手渡す大尉の優しさにも感涙。残虐行為を繰り返すドイツ軍の中にも、人としての優しき心をもつ人間もいた。シュピルマンは奇跡的な幸運と運命を持って生き延びた奇跡の人だとつくづく思った。

エンドロールでオーケストラ演奏されるショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」。鍵盤を映すカットも素晴らしかった。クライマックス以降は、気がつけば涙が止まらず最後の最後まで泣いていた…。

(追記)
主演エイドリアン・ブロディの端正な顔立ちが印象的だったが、怒りや悲しみを出さず感情的にならない演技だったのは、観客に対し、過度に主人公に感情移入させないよう施した演技指導のようにも思える。
つまり、戦争という無慈悲な暴力をありのままに、リアルな残虐さを描写してそのまま観客に伝えたいうポランスキー監督の意図を感じた。(拳銃で撃たれた人が流すドロドロした濃い血はゆっくり流れ非常にリアルだった)