パングロス

無名のパングロスのネタバレレビュー・内容・結末

無名(2023年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

◎低予算?色々残念な上海スパイ・ノワール

トニー・レオンは相変わらず上手くて燻し銀のカッコ良さは健在だし、話題のワン・イーボーは(ファンの人には怒られてしまうだろうけど)、『貴公子』のキム・ソンホと同じ系統のイケメンで二人並んだら区別つかないかもとは思ったけど、演技は悪くなかった。

女優陣も良かったが、とくにチャン・ジンイーが可愛い感じの美人さんで眼福。
正直、胸糞男のエリック・ワンに陵辱された末に殺されたのは、あまりにも可哀想。

というか、本作のキモの二重スパイ、三重スパイのドンデンで、ワン・イーボーが最後には(政治的に)勝利するのは良いとして、愛する婚約者であったチャン・ジンイーは殺されたままだというのは何とも哀しい。

日本軍のスパイ組織のボス渡部は、ちゃんと日本人の森博之が演じていたし、他のセリフのある日本兵たちも日本人が演じていたから、日本語が変だということはなかった。

ただ、せっかく日本風の料亭のセットを組んだというのに、芸者まわりがずさんで、確か舞う曲が黒田節かなんかで色気のないことおびただしいし、美人でもない芸者が話す言葉がまるで「らしく」なくて観ていて萎えた。
中国美人は出せても、日本芸者の美女は出せないっていう何かのコードがあるのか知らん。

全体に音楽が大袈裟で、ホラーかいなと思わせておいて、別に大したことが起きないというコケ脅しが繰り返されてゲンナリ。

時系列を多少いじくっていたが、あんまり効果的だとは思えなかったし。

大山公爵の日本軍における地位について何の説明もないから、彼が死んだことの影響がどの程度なのか、よく分からんし。

渡部が満州を最後の砦と考えていた目論見を、ワン・イーボーが結局くじいたところが全編のオチ的なポイントになっているけど、満州がらみはセリフで出てくるだけなんで、何だか実感が湧かないし。

アクションのピークは、トニー・レオンとワン・イーボーの肉弾戦だが、室内での一騎打ちで地味過ぎるし。

戦前の上海の全景なんかもセットで再現したようだが、全体に小さな室内空間での展開ばかりで、妙に低予算感が払拭できなかったのは演出が悪かったのか。

まぁ、結局は、日本軍ザマァ、中国共産党バンザイな結論に落とし込まなければならないというのが、何とも現在の中国の実情を忠実に反映していて、嫌ぁな気分だけ残ってしまうのでありました。
(『覇王別姫』とかだと全然そんなことなかったのに、ね。ホント、有為転変、諸行無常)
トニー・レオンも、こんなのに出なきゃいけないなんて、つってね。
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