ボギーパパ

ニューヨーク・オールド・アパートメントのボギーパパのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

劇場2024-07 DENKIKAN

スイス🇨🇭制作の映画って初めて鑑賞か?

ペルーを命からがら脱出し、不法移民としてNYで肩寄せ合って、それこそ必死に生きているラファエラ、ポール、テイトの親子。
苦しい生活ながらも支え合い、母は兄弟を、兄弟は母を思いやり生きている。

そういった概略を最初に観せておいて、
その生活の詳細、真実、経緯を少しずつ、少しずつ薄皮を剥ぐように知らせていく手法の作品。
この家族がどうやってペルーを脱出してきたか、母の思いや、兄弟の思いが少しずつ明らかになってくる。
 
この家族は不法移民。
「このままなら本当の透明人間になっちゃうよ、、、」と言う言葉に表されている通り、嫌ならやめな、代わりはいくらでもいるぜ的な扱いを受けるし、居場所のない、存在が認められない悲しみにより心を痛める。

母はスイス人?のインチキエロ小説作家に乗せられプリトーの配達専門店を開店するも、インチキ野郎の豹変ぶりに心をすり減らされる

また語学教室の教師の無神経さをさらっと入れる演出で、この兄弟を含めた移民たちへの侮蔑感が、兄弟たちの心をすり減らす。

こういったすり減らしが積み重なっていく


もう一方、この物語の核が、兄弟とクロアチア人移民のクリスティンの関わり。語学教室に突如現れた、今まで見たこともない美人に兄弟はこころを奪われる。
この娘も壮絶な人生を歩んできたようで、、
その上なかなかのツンデレぶり。

サイコーだったのは
①クリスティンが彼氏に教えてもらったピロートークの説明をし、それ聞いた兄弟の顔(^^)
②生牡蠣をご馳走し、エロい想像をする兄弟の表情
③クリスティンに「今日の分の優しさはお終い」なんて言われちゃった時の兄弟の顔

それでも兄弟は、翻弄されつつも彼女にのめり込んでいく。その心の熱さは若い男の子ならではの暑苦しさが匂い立つ。

そしてこのクリスティン、彼氏が服役中でしかも騙され続け体を売ることで得た金を送っていたものの二股かけられ不倫が判明。挙げ句の果てに、、、、の始末。

でもこの兄弟はクリスティンから受けた「優しさ」に恩義を感じ、余計なことをして自らの運命のネジを逆回しすることになる。

離れ離れになった母と兄弟、
しかしこの親子の愛は強い。艱難辛苦を乗り越えた上に寄り添って生きてきた経験の強さが、その絆による希望も見える。

離れ離れになった兄弟とクリスティン
もう会えないのかもしれないが、彼女と兄弟の間には,男は一生忘れられない絆ができたから、、、兄弟はその思い出を胸に、、、

透明人間になってしまわないよう、存在を訴えた兄弟と母の未来に希望は見えた。時折親子を助けてくれる人もいる。そんな人たちから受ける光明が眩しい。
しかし、クリスティンにはその光明すら見えないのか、、、その後のクリスティンがどうなったのか気になりまくる。

不思議な読後感を残す佳作。
時折インサートされるニューヨークの景色が、この街の活気と非情さを醸し出すことも併せて、後になってふと思い出すそんな後味の作品でした。
ボギーパパ

ボギーパパ