JTKの映画メモ

東京物語 4Kデジタル修復版のJTKの映画メモのレビュー・感想・評価

東京物語 4Kデジタル修復版(1953年製作の映画)
5.0
「晩春」「麦秋」ときたら、これを観ないわけにはいかんわけで。
たぶん3回目の再鑑賞。
記憶力が極めつき悪くて得するのは、間を開けて観ると初めて観るみたいに新鮮な気分で観れること。
堤防で夫婦で座っとるシーンとか部分的にしか覚えとらんかったわ。

で、やはり、傑作揃いの小津安二郎作品の中でも頭ひとつ飛び出て傑作だわ。
なんていうかね。神がかってるというか。映画の神様がいるとしたら選んで作らせた一本の一つみたいな。
ほんで、小津の映画って、柔らかいか硬いかって言うと、コミカルでリズミカルな会話もあったりして中くらいの柔らかめみたいな印象だったんだが、今作はイタリアンネオリアリズモか?いうくらい硬質なんだな。いつもの抒情的な音楽も少なめ。

また、小津安二郎史上最も虚無的な作品はこれで、ここんとこのレビューで毎回書いてる小津安二郎自身の虚無や、「家族」に対するアンビバレンツな想いもこの映画が最も濃厚なんだよな。

凄く感動して心震えた。
が。身も蓋もない要約の仕方をすると。
遥々日本の端っこから東京までえっちらおっちら老夫婦が息子や娘に会いにきたのに邪険にされた挙句その心労ですぐに死んでまった老婆と残された老人の悲しくて切ない話。

そして、美神の如く洋風で美しい紀子(原節子)とは、小津安二郎にとって何か。

ここからは戯言。
小津安二郎が憧憬とともに畏れ忌み嫌った"家族"というフォーマットへの想いは、いつしか原節子にも伝染した。
そして、小津安二郎と原節子は生涯独身を貫いた。