Omizu

風の中の牝雞 4Kデジタル修復版のOmizuのレビュー・感想・評価

3.7
【1948年キネマ旬報日本映画ベストテン 第7位】
小津安二郎の復員後第二作。キネマ旬報日本映画ベストテンでは第7位にランクイン、毎日映画コンクールでは主演女優賞(田中絹代)と美術賞を受賞した。

かなりシリアスで重いテーマが設定された異色の作品。そういう評判だったためこれまで観るのを躊躇っていたが、せっかくリマスター版が出ているので観てみた。

小津の手腕は素晴らしいが、いささか重く描きすぎないように感じた。もちろん演技も演出も全部素晴らしいのだが、求めている小津はコレじゃないという感じ。

戦時中に一度だけ身体を売ってしまう女性をシリアスに描いている。それを自分で許せない女、そして受け止めきれない男。どちらの葛藤も非常によく描かれている。

修一も時子も悪くない。だからこそいたたまれない。戦争が生み出す負の感情をこれ以上なく捉えている。戦争は何も生み出さない。それを分かっていても攻撃を止めることが出来ない昨今の事情とも重なるものがある。

ただやはりいつもの小津の語り口でそれをやられるとあまりに重い。よく出来ている作品だとは思う。でもテーマも語り口もどっちも重すぎて。小津が特別好きという訳ではない身からすると求めていたものではないという印象が強い一作だった。
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