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ありふれた教室のwiiのネタバレレビュー・内容・結末

ありふれた教室(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

起承転結の流れは分かりやすいものの、裏で絡み合う色々な要素とオスカーの最後の行動を考えれば考えるほど、うーん傑作…と唸ってしまう。

・オスカーの最後のルービックキューブから逆算して考えてみる。あれは答えを導き出すアルゴリズムの例として渡されたものなので、つまりオスカーがノヴァクに答えを提示した瞬間だ。それは最後まで居座って沈黙を貫き通すこと。彼は方法を変えながら何度も母親の無罪を主張してきた。最終的にはパソコンを奪って投げ捨てる暴挙に出たけれど、そこでもまだ彼は声に出して主張をしていた。それも通じず、むしろ停学処分に処されてしまった彼の最後の答えは沈黙、ということでしょう。ドイツ語以外の言語をそれを理解しない人の前で話したり、学生新聞に教師陣を密告するような真似をしたり、その内容に関わらず「軽はずみな発言とコミュニケーション」の顛末を1番理解していたのがオスカーで、その上で彼の選んだ対抗手段が「沈黙」、というのはあまりにもかっこいい。
・冒頭の男女に分かれるシーン。我々に見せつけるかのように「女の子に見える」生徒が男子サイドに残った。一方、後半でトムに「裏切り者」と言い放ったジンの一人称は「僕」だったが、冒頭のシーンでは他の女子生徒と同じく席を立った。他にも一口に移民という要素を持つ生徒でも、アリのように成績が振るわない子もいるし、成績優秀な子もいる。教室の中はドイツ社会の縮図であることを示してくれている一方で、肝心の教師陣は個ではなく集団として、人間ではなく管理対象として子供たちを見ていたということか。そうすると集団として管理される生徒が真相を求めてボイコットしたのも印象的に映る。そこで生徒たちがオスカーを擁護するだけの一枚岩ではなかったのも、個としての意見の様々を感じられて良かった。
・結局のところ教師陣は生徒のことを個々の人間ではなく、教室・子供・移民といったカテゴリーとしてしか見ていなかった。その結果、オスカーからルービックキューブを受け取ったノヴァクが(解決したわね…)と微笑むような表情を見せたのだろう。個人としてではなく子供として言いくるめることができた、社会ではなく教室を管理できた、といった具合に。
・社会>学校・教師>教室・生徒、というスケールを大人の目線で描きつつ、実は社会と教室がイコールであることを示唆しているので、学校と教師の在り方が問われる。犯人が誰かというのを探るサスペンスとしてではなく、子供たちが持つひとりの人間としての考え方や権利を無視してはいけない、でもある程度の統率は図らなければならない、と権力勾配と学校教育のバランスを見直したくなる作品。考えれば考えるほど良い作品だなあ…… と思う。なにより、12歳の子供のことが真摯に考えられていて、「大人が考えました」感のない生徒のキャラ造形のリアルさに感動する。
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