デニロ

ゴールド・ボーイのデニロのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
3.0
岡田将生が崖から義父母(矢島健一/中村久美)を突き落とす。突き落とすシーンが悪童たちの記念撮影の場から捉えられていて、突き落とす瞬間がカメラに収まってしまう。で、その悪童たちが岡田将生を脅して、というようなことを予告篇で流していた。

岡田将生はその後、妻松井玲奈をも事故死させる。彼女はヤクザ者との激しい性のアヴァンチュールを愉しんでいるのだけれど、そのやくざ者に覚醒剤を仕込まれたらしく高速で車をぶっ飛ばし追突事故死してしまう。そのやくざ者も岡田将生が仕込んだものだと後々分かる。その事故がテレビニュースで放映されるに至り、先の悪童がその関連映像を見ながら、ああっ、事故死した松井玲奈の父親が沖縄の大富豪で、あの崖から転落して死んだといわれている老夫婦じゃないか、ということで松井玲奈の夫/岡田将生の存在を知る。そして予告篇の通り強請に取り掛かるのです。そんな話だったような。

強請のボスが尾美としのりに似た少年/羽村仁成で、微分積分が得意で実に沈着冷静、いろいろと細工を重ねて自分は事件の中心から外れていく。岡田将生のサイコパス振りに感動、共鳴して、金は要らないからあんたのお知恵を拝借して是非殺して欲しい人がいるので頼めないかと持ち込む。岡田将生も、財産なんてそう簡単に自分の手に入らないから、新たな依頼の方がいいかとかんがえるが、殺しはしないけど手伝うよ、と。で、誰を殺したいんだ。母親/黒木華と離婚して今は別の女と結婚して暮らしている父/北村一輝を女諸共殺したい。

筋は通しているんだけどしょぼい脚本で人物の書き込みが何にもなくて、脅されている岡田将生が普段どんな生活をしているのか何しているのかも全く分からず、何のために義父母、妻を殺めたのかその計画の行方がさっぱり分からない。でも、いざ北村一輝夫婦を殺す段になって約束通りにちゃんと現場にやって来るのです。素直過ぎる。サイコパスだから余計な感情なんて湧かないのか。ただ殺したかったとか。でも同じサイコパス/羽村仁成にはいろいろなシチュエーションを用意して青春させたりする場面を作っている。尤も、それもサイコパスの冷徹な仕掛けなんだけど。

さて、少年が、北村一輝夫妻を殺すにも理由があって、北村一輝は愛する母ちゃんを裏切った悪い奴、そしてその妻を巻き添えに殺したのは、その女が前夫との間に生した女子を殺してしまっていたから。殺した理由は、その女子とは同級生で、好きだ、と告ったら、キモイと言われたので、自殺に見せかけて首を吊って殺す。せっかく自殺で処理されたのに母親の勘なのか、殺された殺された犯人はあの少年だ、と喚きたてて四六時中付き纏うから。ウザい、ということらしい。

みんな殺して取引も終わったしと、岡田将生は自分のマンションで悪童を呼び最終結果確認のパーティを開く。そこで舞台の沖縄らしくハブとマングースの間で何が起こるのかは、それまで2時間も付き合わされていた観客にはマルっとお見通しだわい!

ラスト。『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンの如くにスキップを踏んでいる少年。が、横断歩道の向こうで待ち構える刑事/江口洋介のただならぬ目つきに気付く。さて、信号が青に変わるまでに少年の頭の中でどんなプランが生まれて江口洋介を亡き者にするのだろうか。そして、取って返して愛する母親/黒木華の裏切りにどんな仕打ちをするのか。サイコパス少年の魂は解放されるのか、それとも無間地獄を彷徨うのでしょうか。
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