みむさん

The Dead Don't Hurt(原題)のみむさんのレビュー・感想・評価

The Dead Don't Hurt(原題)(2023年製作の映画)
3.5
トロント国際映画祭にて。

ヴィゴ・モーテンセン監督2作目、脚本主演製作作曲も兼任。
男性支配的な王道西部劇の世界の中で女性が生き抜くフェミニズム映画的解釈もあるラブストーリー。
性暴力が絡む話できつい部分はあるが、コテコテな西部劇があまり得意でない人にもいいかもしれない。

妻を亡くした移民で武骨なボルガーと、裕福(で不快)な商人と関係を終えたばかりのヴィヴィアン(フランス系カナダ人?)が出逢って惹かれ合う。
南北戦争がはじまりホルガーが戦いに向かいヴィヴィアンは一人で生きていかざるを得ない状態。
そこで典型的西部劇の悪役がやりたい放題。

傷つきながらも勇気を失わなかった女性ヴィヴィアンを演じるヴィッキー・クリープスがぴったり。
怒りを覚え復讐心が燃え上がりながらも、復讐は何も生まない、ヴィヴィアンの痛みを受け止め、新たな幸せを築こうとするホルガー。
ヴィゴはすごく良い役を自分で演じていた。不器用だけど優しい。
暴力的な話だが、それを優しく包み込む展開が良い。

ホルガーと暮らしても自立心を持ち続け、男性に護られるという古い価値観に囚われないヴィヴィアン、なぜそういう考えなのかは彼女の少女時代まで遡りわかってくる。

暴力の世界を生きてきた二人の愛の物語、しかし、冒頭にあったシーンを思い出すと……。

テンポはゆっくりだったが、主演の二人がとにかく良いのと、甘いだけでも辛いだけでもない、優しさと暴力と自立の物語としてよかった。