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ダーク・ハーヴェストのドントのレビュー・感想・評価

ダーク・ハーヴェスト(2023年製作の映画)
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 2023年。60年代のアメリカに! ハロウィン因習町は実在した!!(水曜スペシャルのフォントで) ハロウィンの夜になると畑から現れる殺人カボチャ頭。ティーンの男子がこいつをブチ殺すと厄を免れ豊作になると言われているこの町で、今年も10月がやって来た。昨年ブチ殺し大賞を獲得して副賞までもらった青年の弟が、「俺だって兄貴に負けねぇ!」とばかりにひと狩り行って大変な目に遭う。
 同じ因習とは言え本邦は儀式的ですが、やっぱアメリカは違うッスね。殺人カボチャ頭が歩き回っているというのに自分ちのガキを外に出して「男になってこい!」とか言います。カボチャ頭は普通に強いので人体とか頭とか大切断するし、首だってメキョメキョにします。そんな相手に向かって「男になってこい!」と大人たちは息子を送り出すのです。さすがアメリカ。男の国です。
 で、やる気満々なガキどもはお面を被って夜の町を闊歩、カボチャ頭を探すついでに店を破壊したり店主を殺したりムカついた奴を殺したりします。「イェアー!」とか叫んで。因習だってのにこの圧倒的ハレ、無礼講、カーニバル感。アメリカの因習は明るくていいね! 『パージ』のティーン版・標的と賞品つきみたいな世界観です。ろくでもねぇな!
 言うのも野暮ながらこれ、田舎町から出れない青年たちの暗喩なわけで、そうなってくると後半の因習マシマシ大盛り展開も味わい深くなってくる。しかも60年代なのでメキシカンや黒人差別上等。田舎✕因習✕差別のマリアージュで心底イヤになる。因習無礼講フェスが違った容貌を見せはじめるあたりからハレ的なゴアが減るあたり、とても真面目な内容なのである。
 が、しかし。「そりゃあ気持ちはわかるけど、なかなかそう簡単にはいかないよね~ッ」という展開が幾度も続くのには辟易してしまった。ことフィクションの世界なら、因習村は焼いていいのである。因習パーソンはやっちゃっていいのである。後先なんて知ったことかよ、と暴走できるのは虚構の醍醐味であり、おあずけばかり喰らうとストレスが溜まる。最後の最後にどうにかなるが、この程度でスッキリなどするはずもない。
 そんなわけでまぁ6割くらいまでは「おっ、やってるね!」と楽しく。「おっ、コレはアレだから、やるんだろうね!」と期待が膨らんでよかったものの、「やら……ない!」「なら……ない!」の連続でかなり興を削がれた。エジプト十字架のビジュアルとか畑の切株シーンとか某氏の腐れ外道ぶりなどよい箇所もあったので、実にもったいない。惜しいなぁ。なお殺人カボチャ頭の背景(成り立ち)を「しょーがねぇだろ出るんだから」で済ませるあたりは好ましいと思った。
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