keith中村

サンクスギビングのkeith中村のレビュー・感想・評価

サンクスギビング(2023年製作の映画)
5.0
 イーライ・ロスの新作として考えれば大満足なんだけれど、「グラインドハウス」のフェイク予告の実作と考えると、「ちゃんとしすぎていて不満」という不思議な感想になってしまう作品。
 
 一つ目の「ちゃんとしているポイント」は、映像がチープじゃないこと。映画史上の数々のホラー映画へのオマージュも含めて、きっちりした「画」になっている。この辺は師匠筋にあたるデヴィッド・リンチ譲りの美意識なんだろうね。
 二つ目は、イーライ・ロスの作品にどうしても現出してしまう「意識の高さ」。この人は「意識高い系」が嫌いで「グリーン・インフェルノ」とか意識高い系がひたすら酷い目に逢う映画なんか撮ってる癖に、自分も結局意識が高い。一つ目で「美意識」と書いたけど、二つ目は「意識」ね。
 物語はロメロ譲りの大量消費社会批判からスタートするんだけれど、その視点があることで、「グラインドハウス感」はどうしても薄められてしまう。
 三つ目は、ゴア描写のリッチ感。観てて結構「うひぇえええ!」ってなるくらいの気合の入れよう。なんたってR18+だもんね。「人間七面鳥」は笑いながらも、ちょっと精神に来る感じもあった。フェイク予告よりきっちり作ってあったし。まあ、造形のタチの悪さはフェイク予告のほうが上だったけれど。
 四つ目は、ストーリーがちゃんとしていること。「ハロウィン」「13金」系のスラッシャー映画の系譜ではなく、それに続く「スクリーム」「ラストサマー」系の、「犯人当てミステリー、ただし古典的推理小説と違ってゴア描写多め」の物語になっているので、そこも通常なら評価を高くするポイントなんだけれど、やはりグラインドハウス感を希釈してしまってる。
 
 なんか、ほんとなら「褒め」のポイントになるべきところを、ことごとく批判しちゃってるけど、グラインドハウスの長篇化という企画なんだから、そう観ちゃっても仕方がないよね。
 だからこそ、冒頭に書いたように、「ただのイーライ・ロスの新作」とすれば全然満足したんですけどね。
 
 それにしても、これでようやくフェイク予告も「Three down, two more to go!」になりましたね。
 
 まずは仕掛け人本人の手による「マチェーテ」。最高だったなあ。
 ジャンル映画の「お約束のこなし方」の見本みたいな傑作だった。
 
 「ホーボー」は、そのチープなテイストや勢いのある、いや勢いしかないプロットによって、最も「グラインドハウスしてた」と思う。あと、なんつってもルトガー・ハウアーが渋いし、アビー役のモリー・ダンズワースが美しかった。この人の出演作、ほかには観てないけどね。
 
 さてさて。
 これで"Two more to go"なんですよ。
 ロブ・ゾンビさん、よう。いつになったら「狼女」見せてくれるんですか?! 早くしないとウド・キア亡くなっちゃうよ!(←失礼なこと書くな! あと、予告に出てた当人が必ずしも長篇化に出てるわけじゃないからな! でも、ウド・キアならオファーしたら絶対出てくれると信じてる!)
 
 同じくエドガー・ライトに告ぐ!
 あんたも早く撮ってくれ! まあ、あんたに与えられた題材がいちばんベタなんで長篇化しづらいとは思うけど。
 
 まあ、ロブさんやエドガーさんに訴えても仕方ないわな。どなたか、プロデューサーさん、お願いします!
 
 ところで、本作のWikipediaを見ると、「次作:Thanksgiving 2」ってなってますね。続篇の企画あるんだ!
 それはそれで、絶対観る! イーライ君、期待してるよ!
 
 最後にロドリゲスさん。こっちはずっとダニー・トレホを宇宙に連れてってくれるの待ってますからね!
 ダニーさんはウド・キアと同い年なんだから、早くしないとダニー・トレホも(やっぱり失礼なんで以下略)

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直後の追記
 
 人間七面鳥のオーブンはメーカー名が「Rendell」でした。
 本作の脚本家がジェフ・レンデルさんなので、そこから取ってるんでしょうね。