終戦から4年目に発生した下山事件(当時国鉄総裁だった下山氏の轢死体が発見された事件)を、当時の社会的背景を踏まえながら、当時のニュース映像も織り込みながら作り上げられた熊井啓監督によるドキュメンタリータッチの力作。
下山事件、その直後の三鷹事件、その後の松川事件と立て続けに起こった事件の位置付けを明確にしながら、この映画は下山事件を徹底的に追求している。
「あれ?松竹のオープニングタイトルは新しそうなのに白黒映画?」、「隆大介が出演しているので1980年の『影武者』より後の映画?なのに白黒?」と思いながら観ていたが、当時の白黒ニュース映像を盛り込むために白黒映画としたと思われる。
最近は、こうした社会派ドラマ映画の骨太な作品がなかなか生まれづらくなっているような気にさせられる映画であった。
『忍ぶ川』・『サンダカン八番娼館・望郷』などに並ぶような熊井啓監督の傑作のひとつ。