Ryan

異人たちのRyanのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.1
「I know」


ストーリー
ロンドンのタワーマンションに暮らす40代の独身男性アダム。脚本家の彼は現在、両親との思い出を基にした脚本を執筆していた。そのために両親と幼少期を過ごした郊外の家を訪ねた彼は、30年前に他界した父と母を想い出す。


主演 アンドリュー・スコット
監督 アンドリュー・ヘイ


とっても良い。
日本原作の"夏"と言えば。そうだよな。
大優勝は可愛いアンスコとイケメンポールメスカル。
この2人の演技が近年稀に見る最高演技。

全体的に"何を"描き、"どう"伝えるか?そこをかなり大切にしているイメージ。
なので細かな点よりも"心の目"で観ないと良さはなかなか伝わってこないかもしれない。
そして、何より「幸せ」な人には伝わらないし、わかってはいけないような気さえした。

"孤独"を愛し、決して乗り越えるのではなく"抱きしめる"そんな深みがある。
もし、私が今孤独なら「最も響く映画」だったろうなとも感じた。惜しい事をした。

主演2人の何が素晴らしいかというと「SEXの大事さをわかっている」だ。
近年、若年層に取って性描写は不要な存在となりつつあるデータがあるが、今作は真っ向から立ち向かう。決して否定するのではなく「これを描かなければならない」という感謝に近いものを感じる。
それは監督のアンドリューヘイもゲイなので、当時の経験を思い出しフランキーゴズトゥハリウッドやホリージョンソンに対するリスペクトと愛、どれだけこれらに助けられたかを描いていると感じれる。
「今こうして生きているのは彼らのおかげ」の様な優しさと残酷さが見え隠れした。

撮影場所はアンドリューヘイ監督の実家らしく「だから生きた画が撮れたのか」と納得した。実際ここでクリスマスを過ごし、寝室にポスターを貼り、当時の恋人を呼んだ、そんな子供に取っては家が世界な雰囲気を"懐かしい思い出"の様に蘇らせるのは上手い。


とにかく主演2人が最高に素晴らしい。
アンスコが相変わらず芸達者で、どんなタイミングでも完璧に泣き、笑い、苦しんでいた。そんな彼の苦しさに気づきつつも何も出来ない無力さは"彼ら彼女ら"に感情移入するには十分であった。
ポールメスカル、最近めちゃくちゃ良い。
アフターサンとは違った顔、エロさを漂わせながらカッコいいだけではない複雑さを見事体現していた。
「グラディエーター2」が楽しみで仕方ない。

アンドリューヘイ監督の事だから数年後に間接的続編的なのを撮りそうで楽しみにしている。
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