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異人たちのTenKasSのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
5.0
「異人」の意味をアンドリュー・ヘイが自身のフィールドへ手繰り寄せるところから始まる脚色。
昨日大林版を観たばかりということもあって序盤はこれがこうであれがこうなってるんだなと言う確認作業的なところから始まったが、窓から見上げる見下ろすの構図でアンドリュー・ヘイ映画が始まり、母親にカミングアウトをするところから現代版が始まる。
世代間に横たわるそれぞれの苦しみとクィアに対する認識の溝というサブテクストを大筋を変えずに巧みに入れ込む。
家族もまた他人であり、恋人も当然他人である。もしかしたら自分にも他人的な側面があるかもしれないと思わせるほど時間を越えていくアダム。過去に負った苦しみ、傷、烙印はなかなか現在を生きることを許してはくれない。人に会うのが怖かった彼がいま目の前にいるひとを抱きしめるまで。やっぱりここにもそういう困難がある。

すき焼き屋さんがダイナーに変わるのかーと思いつつも夕陽はそっくりでまたも泣く。
ハリーはちゃんと生きててもよくない?と凡人なので思ってしまうが、死人同士抱き合ってもいいし自分で自分の孤独を抱きしめてもいいよなと思ったら、どっちつかずでも大した差はないやと思うのだった…。ここ最近原作モノを多く観ているけど、優れた脚色はそれこそ時間を超えて天才同士が対話している感じがする。
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