JunichiOoya

ヤジと民主主義 劇場拡大版のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

3.0
①裁判を扱った記録映画は難しいと思う。係争中の題材を扱うのではなく(もちろん原告被告双方が控訴しているわけで「係争中」ではあるのだけれど被写体のお二人にとっての二審判決がクライマックスになっているのは間違いない)、「結果」を弄りようがなく、映画としての驚きを表現しにくい。
その辺り、数年スパンではなく長期取材で作品を仕上げた原一男さんの石綿訴訟映画は強いものを感じました。
②TV局の作った映画だということについて。番組表にアップして(スポンサーをつけて)、視聴者の興味も獲得して、という媒体特性から時々の話題に取材して個々作品には深さがなあ…、というような某作品群が生まれるのも仕方がないところ。
でも今回はHBCのお膝元の話で、傍観者の無責任な物言いを許していただけるなら「性根の入り方」が違っていた。迫力ありました。
③銃撃事件の捉え方。どうなんでしょう? 企画立案は事件以前? それとも事件後? 一審判決後の追いかけ方がバタバタして、なんか後追いに見えたのですが。
④主人公のお二人。ドキュメンタリー映画としては、障害者介護現場での繋がりの話だとか、吃音のこととか、お二人の人となりをより具体明確に伝える手法があったよなあ、と感じました。

いつも思うのですが、個人の映像作家が撮るドキュメンタリーとTV局のそれは、持ってるアーカイブのボリュームにあまりに違いすぎます。その潤沢な財産を使いこなすにはどうしたらいいんですかねえ。
JunichiOoya

JunichiOoya