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新解釈番町皿屋敷 お菊寺のドントのレビュー・感想・評価

新解釈番町皿屋敷 お菊寺(2023年製作の映画)
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 2023年。うん、アレだな、ちょっとわからないな。面白いし怖いけどな、わからないなこれは。番町皿屋敷で有名なお菊を鎮めんと怪異譚を奉納したところ霊が成仏し、それが契機となって各地から恐怖体験が奉納されることとなったという「お菊寺」。ここに寄せられた数下り=カウントダウンにまつわる3つの話を描くオムニバスホラー。
 皿屋敷もお菊さんも導入とモチーフとして使われているだけで、3つの話の中身にはなんの関係もないことを先にお断りしておく。まぁこれは前フリ、「こういう場所があって、こういうわけで怪談が集まります!」という建て付けみてぇなもんなので見逃してやってほしい。ちゃんとお寺も住職も出てくるし、スタイリッシュでオシャレな導入映像である。
 スタイリッシュでオシャレな導入で「これは失敗したかな……」と困惑したのは事実だが、1話目の「呪い写り」がはじまると、おや、と思った。白っぽい映像や喰い気味の編集、悪友同士のやりとりとか不穏な空気など、結構よいのだ。おとなしくも外さない短編ホラーというか。よいなぁ、と思っていたところ、禁忌行為というベタな話がグイッとヒネられはじめるあたりでオオッ、と盛り上がった。微妙に強引な展開だけれど、怪異とか呪いというのは強引なモンなのである。
 これはなかなか……と次に来た2話目「通報者不明の110番」、これだけ宇越監督作ながらこちらもよかった。110番を受ける係の女性警察官が不気味な通報を受けるという内容で、思い返すとミニマムな「怪談」話なんだけど、このちまっこさが吉と出ている。マンションに入ってからの空間飛ばし怪異が大胆で面白い。主演の女性の演技がものすごく良く、本作を一段上に上げてくれている。
 こぢんまりとしてっけど、これは悪くないオムニバスなんじゃないか? これで3話目がバッチリ決まったら満足度高いぞ! とワクワクしていたら。していたら、ですよ。うん、アレだな、ちょっとわからないものがはじまったな。詳細は省くけど、「あれっ? えっ?」と当惑すらしましたよ。たぶん皆さん、1話目2話目の手堅い作りはどうしたの? ってなりますよ。
 でコレ、途中からもっと様子が変になって、さらに変になっていく。いや面白いは面白いし怖いは怖いんだけどさ、これはいよいよおかしい。おかしいよ。「お寺に奉納された恐怖体験」って前提でしょ? こんなの奉納されても和尚さん困るよ? ビックリしましたよ。急に無法地帯になるんだもの。詳しく書かないのは、これから観る人にもビックリしてほしいからです。どうか詳しく調べずにご覧ください。
 そんな3話目「犬屋敷の怪奇」が終わったら、お菊寺の情景に戻って「この世には……恐ろしい話がある……」みたいなことをナレーションが語りはじめたので笑ってしまった。何しれっと1話目2話目のトーンに戻してんだよ! 「犬屋敷」見せといて何事となかったかのように締めようとするなよ!
 なんつうかね、何らかの責任を取ってほしいと思ったね僕は。そういうのも勘案しての構成と作りなんだろうけど。いやビックリした。どういう顔でこれをひとパックに詰めて作れるんだ。ちょっとわからないな。皆さんもビックリして「ちょっとこれわかんねぇな……」ってなってほしいです。
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