富裕層女子ジェシカが友達の同じく富裕層女子ミルナを毒殺。しかも富裕層向けラグジュアリーカフェでアイスコーヒーに毒（シアン化物）を入れるという大胆な手口でインドネシアでセンセーショナルに報じられた裁判を振り返るドキュメンタリー。

こういうのがドキュメンタリーになる場合、犯人の歪んだ人間性やそれが形成されたバックボーンにスポットするのか裁判が進むうちに意外な事実が浮上し冤罪の可能性があるミステリー系に分かれる。これは後者だった。おれは前者を期待したんだけど。

富裕層同士の醜いマウントの取り合いの末みたいな毒々しく浅ましい愛憎劇が見たかったけど、そういう事実は出てこない。検察も証明できなかったようにジェシカには動機がない。しかし、カフェ内の防犯カメラにはあやしい行動をするジェシカの姿が。毒殺だとしたら彼女しか毒を盛れない。
だが、毒殺の根拠である検死が不充分で根拠が薄弱だという事実を弁護側が提示する。検出されたとするシアン化物の量が微量過ぎて死ぬことはない。リンゴの種に含まれるのと同量だった。何より致命的なのは検察側の証人で呼ばれた検死の専門医が「この検死では毒殺と断定てきない。病死の可能性も捨てきれない」と断言したこと。

これで世論も一変、それまで過熱した報道の嵐と死亡したミルナの美貌もあって一方的に激しく憎まれ叩かれていたジェシカだったが、杜撰な検死が露呈し検察に不信の目が向けられジェシカ擁護派が形成される。裁判の傍聴席でジェシカ派と反ジェシカ派が互いを罵倒するカオス状態に。
普通に考えて動機も示せず、死因も曖昧、物的証拠もない。あるのは状況証拠だけだから無罪になると思いきや、検察が権威の失墜を恐れメンツのために姑息で強権的な法廷戦術を駆使し、それに裁判所が同調しジェシカの側は追い詰められる。
ここでインドネシアの社会背景と検察と裁判所が癒着してることが解説される。要するに腐敗してるんだよインドネシアの検察は。冤罪確定案件の88歳になる老人の再審にメンツのために死刑を求刑する我が国と検察と大差がない。日本と似てると言えば日本にはない司法を司るよくわからない名の省庁の役人が出てきて検察全面擁護の論陣張るんだけど、こいつがかけてるメガネが政財界の茶坊主こと高齢者は集団自決（権力周りのジジババは除く）でお馴染みの鬼畜、成田悠輔と同じ○□メガネかけてんだよ👓😯 こいつのはオシャレなセルフレームなんだけど、この○□メガネ、どっかのブランドが出してるの？したり顔で根拠のない体制擁護を偉そうに披露するとこまでそっくりだったんで笑えた。本作、ビジュアル的にはここがハイライトだったな。2人しか知らないが○□メガネは人間のクズがかけるメガネと認識した。

正直、この事件のことより思ってたより酷いインドネシアの格差に遣る瀬ない気持ちになった。本作は被害者側も犯人とされる側も富裕層だからリッチな人々や洗練された都市の映像ばかりで、おれが知ってるインドネシアの風景とはあまりにかけ離れてた。
おれの知ってるインドネシアはスラムが広がり貧困に打ちひしがれた庶民が溢れ、そんな家庭から捨てられたストリートチルドレンが衛生状態が劣悪なストリートにやることもなく群れている金持ちと権力者達だけの政治が現出させたお馴染みの地獄絵図だ。
「こいつ、何知ったような口きいてるの？」と思う方もいるかも知れないが、知ってるんだよ。行ったことはないけど、この地獄は『マージナル=ジャカルタ・パンク』というドキュメンタリーに余す所なく記録されている。

『マージナル=ジャカルタ・パンク』はインドネシアで絶対な支持と尊敬を集めるパンク・バンド、MARGINALのドキュメンタリー。インドネシアでと言ったがアンダーグラウンドでは世界中のパンクスから支持されている。ハードコア以降パンクの本質はアンダーグラウンドなので現代に生きるパンクスで知らない人はチェックすべきだ。そして支持すべき。音楽性や嗜好性の違いでスルーする逃げは許されない😏
失礼な言い方になるが普通のロック好きでも理解できるように例えるとMARGINALはインドネシア版レイジ・アゲインスト・ザ・マーシン。
政府批判のデモや抗議集会は勿論のこと、先に述べたストリートチルドレンのために自分達の住居を開放し居場所として提供してる。そして彼等の自立の手助けにウクレレや版画教えてる。バンドの著作権を放棄しＴシャツ等のバンドのマーチャンダイズを自由に作成販売させて利益を得ることを奨励し、技術、金銭両面から強力で地道な支援活動を展開してる。パンクスならば最大限のリスペクトしなければいけないバンドだ！おれなぞ尊敬し過ぎで来日した時にこれでもかってぐらい色々買ったからな。MARGINALのシャツは先に述べた事情から作り手が多くデザインの系統がバラバラで復刻不可能なのも多いから集めがいあるよね😏
そんなおれの常軌を逸した買いっぷりが目に止まったのかライブハウスのバー・スペースでタバコ吸ってたら中心メンバーのマイクとボブが「ありがとーございます😊」「よろしくお願いします😃」と日本語で声をかけてきてくれた。それでせっかくだから写真をと思い、横に居た小柄な女性に撮影をお願いしてスマホを渡した📱
この女性、スゲーテキトーに素早い動作で撮って、「はい📱」て返してきた。照準とか合わせた気配ないからちゃんと撮れてるか不安になり、速攻でチェックしたら、びっくりするぐらいキレイに撮れてた✨
後から来た友達に聞きてわかったんだけど、この小柄な女性は『マージナル=ジャカルタパンク』の監督である中西あゆみさんだったんだよ、元々写真やってたからうまく撮れて当然なんだ笑 中西さんは長年マージナルと帯同してこのドキュメンタリーを更新し続けている誠実な映像作家、そんな方に撮ってもらってラッキーだった、申し訳なさもあるけど笑

とにかく、こんなセレブの冤罪事件のドキュメンタリーなんかより『マージナル =ジャカルタパンク』観ろよな。俺たちが注視し同情し連帯すべきは運の悪いセレブではなく不当なシステムから構造的に虐げられ続けてる人々だ😬

Jakarta Punk: The Marjinal Story - Kickstarter Pitch - YouTube
YouTube-BlankTV
https://youtu.be/hWMGBlvzYi0?si=Rj8va_6Es_rap4g4

【2014.05.24】マージナル「ルカキタ」 ＠沖縄
https://youtu.be/R0aTekwqwaI?si=5GEiQUSfUqUOoE_X

何気なく野次馬根性で観てみたら案外深いところまで連れて行かれた。単に殺人がどうとかのドキュメンタリーではなく、なかなかの良作。

はじめは親友をシアン化物で毒殺したとされたジェシカ・ウォンソを追っているのだが、段々とインドネシアという国の根本まで切り込んでいく。

インドネシアの法制度、そしてマスコミの過熱、ジェシカは本当に有罪だったのか疑わしく思えてくる。確かに落ち着きすぎているようにみえるけど、殺すには動機が弱すぎる。

ルッキズムのようなものも言及される。ジェシカっぽいテレビドラマの俳優が「こういう顔はヘイトを受けやすいのよ」というようなことを言っていたりして生々しい。

ジェシカ・ウォンソは本当に親友を殺したのか、最後まで分からないが、インドネシアという国の病理がしっかりとあぶり出された良作ドキュメンタリーだった。

インドネシアの理不尽な裁判を観る。
裁判やる意味あるのか。

殺人犯など存在せず病死だったのかも。