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METライブビューイング2023-24 ヴェルディ「運命の力」のYuki2Invyのレビュー・感想・評価

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METでは上演自体も20年ぶり&ニュープロダクションは30年ぶり、てなコトっぽいのですが(ライブビューイングは初登場)且つ、私自身もチャンと観たのは初めてだったのですが、コレごっつ面白かったすね……(帰ってきてすぐ、オーソドックスな演出版も観たくなって色々と観漁っちゃいました)

モダンで斬新、そして(あからさまに)凝りまくって超ゴージャスな演出がまずは非常に見事でした。舞台設定を18世紀から「現代のいつかどこか」のプラス「戦時下」に置き換えたことで、その運命のもたらす悲惨さをより際立たせて物語に更に重みが増せていた様に思います。冒頭、序曲の間も舞台上ではサイレントでお芝居が進行し、一幕の描写に到る経緯(特にレオノーラのアンビヴァレントな感情)がより分り易く描写されていたのも実にゴージャスだったと思いますし、その後も各幕の最初につくり込んだ映像+字幕で状況説明がなされるので、内容が複雑だと言われる作品かと思いますが総じて比較的分り易く+(前述どおり)雰囲気も終始重厚に醸されていたと感じます。また、全ての幕で回転舞台を使用して次々とシームレスに場面を切り替えてゆくのは、演劇的に効果的のみならずソレそのものがヒトの逃れ得ぬ「運命の車輪」を表しているという、コレがコレまたお洒落で好く出来てるじゃねーですか。一点、今プロダクションではカラトラヴァ侯爵と修道院長が一人二役となっており、なのでオーラスの修道院長の言葉が侯爵=父親からのもの、と捉えられる様な仕掛けが施されている…のですが、個人的な感覚としてはコレは初見の人にはちょっと(効果が)分り難い方のヤツかな…とも思われましたかね。

歌手の出来も、コレも総じて素晴らしかったと思います。そもそも、ネゼ=セガンが「ちょっと言い過ぎかも?」と断りつつヴェルディ最高の音楽だ!と評していた様に、音楽自体のクオリティが全編で相当にエゲツない!てコトであるかとも思います、が何と言ってもとにかく主役のリーゼ・ダーヴィドセンの出来は確かに凄かったと思いますね。二幕のラストのアリア『天使の中の聖処女』は、また確かにヴェルディ(或いは全てのオペラ)の中でも最高峰…と言って好い荘厳なる出来だったのではないでしょうか(⇒私はたぶん、コレだけはも~一生忘れないと思います)。

個人的にはもう一人、プレツィオジッラも今作ではまた、同様に現代的でかつ少し奇抜な出で立ちで登場するのですが、前述どおり戦争の悲惨さがより際立てられている今作では、本来意図された彼女の役割である「場の空気を変える」という点でもより効果を高く果たせていたかと思われました。ただし、その一方でも、それはただ明るく・楽しい雰囲気をもたらすというコトではなくて、持ち込むそのモノは何らか望ましくない意味での(狂気に近い様な)高揚だ、という意味では、ソコもまた適切な表現だったかとは思われましたですね。
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