きらきら武士

アイアンクローのきらきら武士のレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.6
ザック・エフロンという有名俳優さんを存じ上げなかったのだが、後でbefore の状態の彼を拝見してあまりの違いに驚愕した。イケメンて、現世で筋肉ゴリラに転生できるんだな…
それにしても彼の俳優魂の凄まじさよ。さぞ肉体的にも負荷が重かろう。命を削っているようで少し怖い。

マッチョな肉体やそのパフォーマンスに対して、主人公の彼のハートの繊細さが際立っていた。中でもザック・エフロンの純真な眼差しが印象的で、それでいて終始ちょっと自信なさげな、頼りなさげな表情、目元の演技が効いており、憐れみを誘う。

彼はあんなにモリモリマッチョなのに、精神は結構未熟。筋肉が臆病な自我を守るための鎧のようにも見えてくる。父親の支配からは逃れられない。恋にも奥手。押し切られて結婚。でも、彼女がいてくれたから彼は救われた。

ラストは私ももらい泣き。
家族の不幸はつらいね。
そして自分だけが生き残って幸せでいることへの罪悪感。

兄弟愛がすごい。
それはやはり父親が父親だからなのか。
なぜあそこまでの兄弟の強い絆が結ばれたのだろうか。

対する父親の尋常でない金銭欲、名誉欲。エゴ、呪縛。
いつの時代も父親は基本的に「クソ親父」ではあるが、さすがに彼は度を過ぎていて擁護すべき所は無い。
しかし、何が彼をそこまで駆り立てたのか。変容させたのか。映画ではちょっとだけ彼の人格の複雑さにも触れていて気になる所ではあった。

事実に基づいたフィクション・ドラマ。
タイプとしては『ボヘミアン・ラプソディ』と同じ。最近の流行りか。
再現度の高さが見所の一つのようだが、元々プロレスにあまり興味が無い私はそこまでアガる所は無かった。
いや、ブルーザー・ブロディが出る所だけは、彼の入場曲であるブラック・サバスのアイアンマンがかかるんじゃないかとちょっとだけトゥンクした。あれだけ好き。
盛り上がったのは、ラッシュのトム・ソーヤが使われていた所。時代感もそうだし、歌詞の内容も現代のトム・ソーヤということで映画のシーンにマッチしていた。映画の中でも唯一といっていいアゲアゲのシーンで、一家にとっても幸せのピークだった。あとはずっと重苦しいしんどい展開が続いていく。事実に基づいているからしょうがないのだけれど、そこはドラマとしてはやっぱりちょっと平板ではあった。「ほな、どないせぇっちゅうねん?」という話だが、兄弟一人消して話を整理してるぐらいだから、多少事実に基づかないアレンジを加えても問題は無かったのでは。

最後に。
映画とは関係ない話だが、左斜め後ろに鑑賞マナーがなっていないノイズ親父がいて、気が散ってしょうがなかった。多分往年のプロレスファンか何かで、普段あまり映画鑑賞をしない人種なのだろう(と一方的に決めつけて腹の虫をおさめる)。
ポップコーンをザラザラ鳴らして食うな、足を踏み鳴らすな、大きなため息つくな、持ち込み禁止のペットボトル飲んで床に落とすな。憤懣やる方なし。

アイアンクローして優しく諭してやろうか。
鑑賞中はお静かに、ですぞ?

ああ、疲れた。

#2024 #30
きらきら武士

きらきら武士