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アイアンクローのNAOMIのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.8
1980年代に活躍した伝説のプロレス一家、
フォン・エリック一家をモデルとした伝記映画。

プロレスラーだった父に、プロレスラーになるべく育てられた4兄弟。
一家に次々と不幸が起こることから「呪われた一家」と呼ばれた。

父のフリッツ・フォン・エリックは有名なプロレス技、”アイアンクロー”の元祖なんですね。
(私は「稲中卓球部」で初めて”アイアンクロー”の存在を知った)

私は全然プロレス詳しくないんだけども、なんとなく面白そうと思って観ました。


往年のプロレスファンからしたら、この一家の存在を映画にしている、という点で楽しく見れると思うけど、私がすごく気になったのが「毒親」と「過度な家父長制」の観点。


四兄弟は、それぞれ将来への希望や適性がありながらも、父であるフリッツにプロレスラーのレールを敷かれていく。
息子たちも父を崇拝する気持ちや影響が強すぎ、期待に応えようとどんどん追い詰められていく。

父は息子たちに期待をかけ、それは愛情であると信じて疑っていないが、兄弟間で問題が起こった際には見て見ぬふりで、「兄弟同士で解決しろ」と突き放す。

両親は仲は良いが、母は父に何も言えず、どこか他人事で家族を見ている。


この映画において、父も母も現代でいうところの毒親なんだけど、そこを強調して描いてはいない。

息子たちも、父や母を尊敬しているがゆえに、両親に対して「何かおかしい」という感情を明確に持つこともできず、ひたすら罪悪感やフラストレーションが己に向き、おかしなことになっている。

父も母も、歪んだ形ではあるだろうが、子供たちへの愛が根底にあるのでそれがカモフラージュになってしまって、一家全員、自分たちが健全でない状況にあることが理解できていない。


なんか、こういう家庭って今もたくさんあるんだろうなあ。。。と思ってしまった。

プロレスに限らず、勉強やスポーツやアートとか、親が、自分の成し遂げられなかった偉業やコンプレックスを子供に押し付けて歪ませていく、みたいな。

それに上手く原因や名前をつけることができず、「呪いだ」と認識するしかない子どもたち。

やるせないっすね。

プロレスシーンは本当に再現度が高く、
主演のザック・エフロンの肉体が仕上がってました。
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