きゅうりのきゅーたろう

春の画 SHUNGAのきゅうりのきゅーたろうのレビュー・感想・評価

春の画 SHUNGA(2023年製作の映画)
4.4
鳥居清長の『袖の巻』(全十二図)の復刻プロジェクトをはじめ、春画を鑑賞する春画ナイトや海外のコレクターなど、春画を知ることで日本人を知ることをテーマにしたドキュメンタリー作品。


春画=笑い絵を現代の劇映画として描いた『春画先生』と対比するかのような、Eテレとかでやってほしい知識としての春画の映画で、大学時代に江戸文学を専門としていた自分にとって江戸時代の文化芸術は大好きなので大満足の作品でした。

江戸時代の芸術には浮世草子などの文芸作品や今回の絵もそうなんですけど、パロディの文化があって、(もちろん娯楽リソースの少なさという点もあるが)『教養』のなせる技であると思えるから、そこがグッと来るんですよね。だからこそ、磯田湖龍斎の「逸題組物」はパロディ元の解説もされており、刺さった。

身分の差も性差もここには無い江戸時代の庶民の明るい側面が浮かび上がってくるし、婚礼調度品に春画があったとか、戦の時鎧の下に春画を入れてたとか、生=性であることを思わせる当時の価値観に舌を巻いたし、そういうおめでたいものという側面は現在ばかりを見ていたらなかなか辿り着けない思想であるだろう。

「毛割り」とかいう、ここ以外で人生で凡そ使うことの無さそうな言葉に出会えたのもひとえにあまり知らなかった文化に触れた証

光の当たり具合で柄が浮き出てくる3D仕様のものは初めて知ったので、こういう映画で見られるのもありがたいけど、ますます実物で見たくなったし、そうしないと真の価値を体験することはできない貴重さにも惹かれる。