茶碗むしと世界地図

PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~の茶碗むしと世界地図のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

 徳島県の高等専門学校に実在した生徒たちをモデルにした青春映画である。

 タイトルから想像するものとほぼそのままの内容で、勝負よりも大事なものを達郎(鈴鹿央士)たちが手にするという作品になっている。正直、あまり練られていない脚本で展開に滑らかさが欠けるなぁ……と思ったが、ただ達郎たちがぱっとしない高校生というところがポイントで、作品と妙にマッチしているような気がする。青春の熱いぶつかり合いみたいなものがほとんどなく、達郎たちのコミュニケーション不全なところをけっこうもごもごした感じでユーモアを交えて描いており、妙にリアルで愛着が湧いた。達郎も翔太(奥平大兼)も家庭に問題があってかなり深刻なのだが、eスポーツと直結させてテキトーに解決させず、翔太に関してはラストで紗良(花瀬琴音)に振られてもいるのでけっこうビターな後味がある。このへんのすっきりしない感じも最後までコンセプトが貫かれていると思った。何よりも良いのは、eスポーツという逃げ場のある子供たちをポジティヴに描いているということである。

 そしてこの映画はえらいリアルな食事シーンが見られる。翔太がピザを取った家に帰ってくるシーンで、父親の康雄(斉藤陽一郎)がサイドメニューのチキンをちぎってパックご飯の上に乗せ、仕上げにお茶をかけたものを実に美味しそうに食べるのである。康雄にとってはあれは贅沢ごはんなのだろうと思わせる描写であり、翔太の一家が困窮していることを痛感させられるシーンになっていて感心した。