ドント

ほんとにあった!呪いのビデオ103のドントのレビュー・感想・評価

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 2023年。記念すべき100は配信もソフトもまだだけど、巻は続くよ103巻(※100巻は12月だそうです)。カマシからノイズと映像切り替わりの「スキー」でスタート、砂嵐の顔や声よりも、その直前の体がニュルンとなる映像の方が禍々しくてよい。呪われている、という感触がある。
 短編は「山道のトンネル」「運動会」にはあまり怖さがわからず首をひねったものの、「岬」の偶然性によって現れるオバケの不意打ちぶりは見事で、またその前までカップルが手すりに彫ったラブラブ落書きを見せられていたので落差がよかった。
 長編の「鬼女の山」は素材を出して並べる橋渡し的な話。淡白な味わいながらも空き家(?)探索パートはなかなかにグッド。ギリ人が住める様子の室内の厭な空気、ヌッと現れた人のシルエット、そこから普通にお茶とか出してくるギャップ、と思ったらやっぱりおかしい人だった居心地の悪さが大変よろしいです。次巻でバチッと締めてほしい。
 で、個人的には2本目「消波ブロック」、これが相当に怖かった。テトラポッドの隙間に帽子を落としたのでハテどこかな、取れるかな、と小型カメラをスルスル下ろしていった先で捉えた映像である。怖い点その1。まずテトラポッドの隙間なんてのは普通見る機会もないしそもそも入れない。見る機会の絶対にない空間にカメラが入っていく怖さ。
 二つ目がこのカメラ、釣糸で下がってるため360度ぐるりぐるりと隙間の中で回る。撮影者の意思とは無関係に「撮れてしまう」映像の怖さは、シリーズ監視カメラの上位互換とも言える。撮影者の目が離れているため、オバケが出ても「わ!」とカメラが逃げないことは確定してしまっている。見ている者は何が出てきてもひとりで向き合わねばならないのだ。
 三番目は、カメラが回りながらどんどん下がっていくスリル。すぐそばには深い海が広がっているわけで、地獄への下降を思わせる恐怖がひたひたと迫ってくる。ごうごうと打ち寄せる波が人のうめきにも聞こえてさらに怖い。正直オバケが現れるシーンより、現れるまでの何が起きるのやらわからない映像の方が恐ろしく、「わっ、アッ、ワーッ」とぞわつきながら観た。シリーズで20本選べと言われたら選出したい一本である。
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