ドント

ある閉ざされた雪の山荘でのドントのレビュー・感想・評価

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)
-
 2024年。惜しいな! もったいないなこれは!! オーディションに合格した劇団員7人が呼ばれたのは人里離れた山荘、演出家の指示により「孤絶した」ここで「虚構の」事件が発生するが、徐々に異様な様相を呈していき……
 原作は東野圭吾の同名小説で既読。キャストと演技に関してはほぼ文句なし、話の脚色も見事だと思ったのだが、いかんせん映画/映像作品としての美味しさに欠けていて、ウゥンウゥンと唸りながら観ていた。新春特別2時間ドラマくらいの感触なのだ。
 ネタバレは避けるがこう、全体に平坦なのだ。たとえば序盤の導入とか疑念が芽生えるあたりとか、どうにもワクワクしない。原作もまぁなかなかに渋い話ではあるが、それにしても、である。劇団員ギスギスがスパイスとしてふりかけてあるのにその旨味も生かされていない。
 そした真相を明かしていく時の「なにっ」「なんだぁっ」という快感が映像に落とし込まれておらず、はいこうでした、こうなのよ、という情報開示だけになっている。妄念や怒り、哀しみや葛藤などが渦巻く真相なのに、それをビジュアルとしてガツンと見せて観客をブン殴ろうとしていない。なので人間劇のエモさも迫力が出てこない。『ドッグヴィル』とかやってる場合ではないのである。
 そんなわけで腕のある(比較的)若手の俳優たちが落ち着いて腰の重い演技を見せてくれるのに、それに応じる演出パワーに欠けていて、心底もったいないなぁと思ったのであった。あと演出家の声が超大物声優なので、ボイスメッセージが流れるたびにちょっと面白くなってしまう事故もあった。惜しいなぁ…………。
ドント

ドント