ルーク大佐

伯爵のルーク大佐のレビュー・感想・評価

伯爵(2023年製作の映画)
3.8
「もしも独裁者ヒトラーが〇●だったら…」「米国大統領が宇宙人だったら…」のようなチリ産改変ストーリー。政治ネタで攻めると重くなりすぎるからなのか、現代の若者も興味を持てるようにバンパイアをかませてきた。

チリの独裁者ピノチェト政権と吸血鬼をまぶしたアイデアはユニークだ。
エマ・ワトソン主演『コロニア』はピノチェト政権暗部をえぐった胸糞映画であるし、チリ人のトラウマとしていまだ心に刻まれているのだろう。

ピノチェト政権下ではアメリカ型新自由主義経済を実験的に採用し、民営化や規制緩和で小さな政府を目指し、それなりの効果を上げたために注目を浴びた。後に英サッチャー政権は新自由主義を推進、さらにチリの隣国アルゼンチンとフォークランド戦争を起こした。

本作はこれらの歴史的事実をネタにびっくりするオチを持ってきた。
絶妙の脚本だ。ベネチア映画祭で最優秀脚本賞をとったこともうなずける。リベラル映画人はもともと左翼や共産主義者が多いからピノチェト政権の左翼弾圧は許せんはずだしね。

吸血鬼が軍用コート(マント)で宙を舞う描写はシャレてるし、終始不協和音のストリングミュージックも場を盛り立ててくれた。
ルーク大佐

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