むむ

市子のむむのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ものすごくハードなシーンや直接的な表現があるわけではないけど、視聴後の余韻がとんでもなくてじわじわ辛くなっています。鼻歌、ひとりでふらふら歩いてる市子、淡々と流れはじめるエンドロール、セミの鳴き声、終わり。個人的になかなか見ない終わり方だった。途中からピアノとかのインストでも流れそうなところを、情報量の少ないセミの鳴き声で終わらせてくる。否が応でも内容を反芻する。真夏の物憂げなものも感じて、苦しい。

長谷川のことだけは利用していたわけではなく本当に好きだった、だから過去のことは知られたくなくて、でも楽しかった頃のことは断ち切れなくて写真を持っていて?自白して逮捕もされたくなくて?、というか罪を犯してる意識とか、償うかという発想に至っていたかもわからないな。ただ生きたかったからやってることなのかな。
戸籍がないってどういう感じなんだろう。自分を自分だと証明するものがなくて、それでも市子として生きていたかったから、保険証を持っていたのに関わらず病院にも行かなかったような彼女が、今後おそらく冬子として生きていくと考えついたのは、どういう気持ちからだったんだろう。
幸せになっちゃいけないというような発言があったので、あの涙は過去の被害者や長谷川への罪悪感から来ていたんだろうか。それともどうにもできない悔しさ?

「悪魔だ」と作中でも2度言われていたし、確かに魔性の女の面もあるように思う。でも、「そういう女」の話というだけではくくれない映画だ。人間、なにを抱えているかわからない。憶測でしかはかれないただの観客の私は呆然とするしかできそうもない。最後の独白のシーン以外は、やっぱり考えても市子の気持ちはわからない。観てよかった。
むむ

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