菩薩

市子の菩薩のレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.4
鑑賞前に「下町のナポレオンが…」とだけ下書きに記しておいたのだが、しっかり中村ゆりが勤務するスナックの酒棚にいいちこが並んでおったので無駄にならなくてよかった。

山中で白骨遺体発見との報を知らせるテレビの上の本棚に並ぶ『寄生獣』、この時点でお察しのいい方からすればどんな話かは分かると思うし、あとは答え合わせの様に時系列をこねくり回しながらなぜそうなるまでに至ったかまでの日々が明かされていく。社会の中で透明化されながら生きている者達に色を塗る必要性は当然あるし、そこに対して映画がどう寄与していくかも重要な問題だとは思うが、あたかも障碍者は健常者の「当たり前の幸福」を破壊する存在だとでも言いたげな描き方は気になった。一応「幸せな日々もあった」との事で、何かしらの理由で社会の中で孤立し限界の状況に追い込まれたのだろうと察する事は容易だが、そこの描きが足りていないせいで、例のシーンの露悪性だけがただただ目立ってしまった様に思う。杉咲花の演技は何を言うでも無く素晴らしかったと思うし、中村ゆりは中村ゆりで三連覇していたが、傑作と呼びたくなる様な衝撃はこれと言ってない。ブラジャーを買いに行く場面は『湯を沸かすほどの熱い愛』への目配せの様に思えて普通にキモかった(原作にあるんだろうけど)。全体的にあと一歩が足りない。
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