ヨーク

アリバイ・ドット・コム 2 ウェディング・ミッションのヨークのレビュー・感想・評価

3.7
未体験ゾーンの映画たち2024の3本目です。
日本ではフィリップ・ラショーといえば原作愛に溢れまくっていた『シティーハンター』の実写映画で一躍有名になった感があるが、まぁ俺もその口である。しかし『シティーハンター』の実写版が面白かったのは確かにその通りなのだが個人的にグッときたのは『シティーハンター』の原作再現が凄いということよりもコメディ映画として単純に出来がよくて、そして何よりも80年代とかのアメリカのコメディ映画のような懐かしさがあったということだった。多分フィリップ・ラショー自身がその辺直撃世代なんでしょうね。『シティーハンター』も80年代の漫画だし。
んでその後の『バッドマン』もよく出来たお気楽なコメディ映画でフィリップ・ラショーすごいなー、あくまでB級なノリではあるもののちゃんと外さない映画を仕上げてくるなー、となっていたところに本作『アリバイ・ドット・コム 2 ウェディング・ミッション』である。ぶっちゃけ広告さえ間違わなきゃ未体験ゾーンみたいなイベント上映じゃなくて一般公開しても普通に客入るだろと思うのだが、そこの壁はやっぱりちょい高いんですかね。まぁそれはいいけど、映画としては相変わらずのクオリティで面白かったですよ。
ただタイトルが『アリバイ・ドット・コム 2 』とあるようにモロに続き物ではあって、そこ大丈夫なのだろうかという不安はあった。でもそこも結論から言えば、1は未見の俺でも余裕で面白かったですね。さすがフィリップ・ラショーのコメディという感じで登場人物たちの行動がどんどん収拾が付かなくなってエスカレートする感じが楽しい。シティーハンターとバッドマンが好きだった人はきっとゲラゲラ笑いながら観られるだろう。
前作を見ていないので色々と推測しながら観ているところはあったが、お話はタイトルにあるアリバイ・ドット・コムという会社が大体その内容も表している感じで、その字面からも何となく察することができるように依頼人のアリバイをでっち上げてトラブルを回避するという、いかにもギャグマンガの設定でありそうなお話が中心のものである。というかこれそのまんま『銀魂』とかでもできるんじゃないかなというノリだと言えば想像しやすいかもしれない。ただ本作の主人公はどうやら前作のラストでそのアリバイでっちあげ会社を畳んだようで、これからは真っ当な仕事で嘘のない人生を送るのだというところから本作は始まる。んでこれもおそらくだが前作のヒロインとの結婚が決まって、これまたタイトルにもあるウェディングミッションというわけになるのだが、ここは細かく説明はしないが結局主人公は再び元アリバイ会社のノウハウを使って嘘を吐かざるを得ない状況になるわけですな。しかも今回は自分のために。
そこら辺の嘘がまた新たな噓を呼んでどんどん収拾がつかなくなっていく感じが実に面白い。そしてバカバカしい。このくだらなさが実にいいですね。ちょうど1月からの冬アニメで『うる星やつら』のリメイク第2弾が始まっていますが、本作は『うる星やつら』的なバカバカしいしょうもなさに溢れていると思うよ。そしてそのしょうもなさは本当に下らないんだけど、下らないからこそ救われるというところもある。その茶番は酷い下ネタ塗れのギャグとブラックジョークの中でどんどんと境界を越えていくのである。それは嘘と事実の境界だったり各登場人物の思いの境界だったり、様々だが最終的にはまさに境界という物理的な壁を越えてお話は大混乱へと陥る。そのエスカレートしていくドタバタ感とアホらしさはさすがですの一言だったね。
本作は基本的にしょうもないドタバタギャグのコメディ映画だが、越境からの混沌の先にしか相互理解はないと思わせるような節もあり、これが中々侮れない映画なのである。それぞれの立場を守ってそのポジションをお互いに尊重しながら付き合うのが大人というものだと言われればそれはそうなんですけど、時にはそこを突き破ってみないといけないときもあるんじゃないかな、というようなことも思わせてくれる映画なんですよ。
基本バカみたいな映画だけどそういう風に観られる余白のようなものもあって面白かったですね。
本当にちょうどいい感じのコメディでほっとする。実にいいバカバカしさの映画でした。個人的には主人公の隣人宅で偽の恋人を両親に紹介する場面が最高でしたね。これ文章で説明すると意味分かんねぇな。しかしその混沌具合がいい映画なんですよ。面白かったです。
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