スワヒリ亭こゆう

ナポレオンのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.8
世界史が好きな人はナポレオンについて詳しいんでしょうけど、僕はあんまり詳しくないんです。
フランスの軍神や英雄(ベートーヴェンの影響)のイメージはあったんですけど、時代背景とかはあんまりよく分かってなかったんです。
本作を観てフランス革命の後に活躍した人物だった事を知ったぐらいにハッキリ言って疎いです。

本作はリドリー・スコット監督の映画で、ホアキン・フェニックスが主演。『グラディエーター』で悪漢を演じたホアキン・フェニックスがナポレオンを演じています。
フランスの英雄をイギリスの巨匠が米国のアップル製作で撮った英語劇なんです。
ナポレオンをリドリー・スコットが撮るとナポレオンの功績よりも人間性にフォーカスを当てて撮るんですね。カッコ良さではなく、嫉妬深くて、女々しくて、執念深い。『グラディエーター』のマキシマスとは全く違うアプローチでした。
少し前に観た北野武監督の『首』の織田信長みたいな感じで、英雄譚にはしない、英国からの視点なのかなぁと思いました。

ナポレオンが軍事的に功績を上げていく様子も描かれてますけど、民衆から支持されつつも破滅へと向かっていったフランスの皇帝・ナポレオンというのが本作を観た感想です。
大陸軍と名付けた欧州諸国を支配して勢力を拡大したナポレオンの功績はあまり具体的には描かれていません。
それよりもナポレオンがフランス国内で如何にして皇帝になったのか?それが印象深い内容でした。
それとナポレオンの皇后ジョゼフィーヌをヴァネッサ・カービーが演じています。『ミッション・インポッシブル』でお馴染みの女優さんです。
ジョゼフィーヌに対するナポレオンの愛情表現と嫉妬からの憎悪も終始描かれています。

政治的な影響や軍事的影響などナポレオンがもたらした功績というのは、あまり描かれていませんね。
ナポレオンが何をしたのか?一番のポイントはロシアへ侵攻した時に約40万人が戦死したと言われ、戦死者数に対して、たったの4万人しか生き残れなかった。冬のロシア侵攻の無謀さに尽きるのではないでしょうか。

本来なら欧州諸国を支配した時に、その土地の領主が支配し、農奴制を撤廃した事や法律に関しても強く影響を与えたナポレオン。他にも車線が日本は左側通行ですが、欧州諸国ではナポレオンの支配下にあった国々では右側通行でナポレオンと敵対していた英国は日本と同じく左側通行ですね。

戦死者の多さを前面に押し出したストーリーはナポレオンを悪魔や虐殺者というイメージにしやすい感じがしました。
英雄視されがちなナポレオンに対してのアンチテーゼにも感じられたストーリー。
面白い映画ではないけど、興味深く観れました。
エキストラの数の多さが戦闘シーンの迫力ある演出になっています。
リドリー・スコット監督の伝記映画は見応えがありました。