ゆみモン

ほかげのゆみモンのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.1
半分焼けた小さな居酒屋の奥。 女(趣里)はそこで一人で暮らしている。売り物は酒と自分の体。普段は、世話役の中年(利重剛)と、彼が回してくる客くらいしか来ないようだが、ある日、ひとりの子供(塚尾桜雅)が入りこんでくる。食べものを盗んで暮らしている戦争孤児だ。邪険にしても、その子供はやって来て、客として訪れた若い復員兵(河野宏紀)とともに居着く。一緒の時間を過ごすうち、3人は仮の家族のようになっていくが、長続きはしない。
やがて子供は、片方の腕が動かないテキ屋の男(森山未來)に誘われて「仕事」の旅に出る。

女と子供は、なぜ一人で生きることになったのか。男たちは何を体験してきたのか。説明抜きで物語は進んでいくが、登場人物の肉体、たたずまい、アクションが、過去、現在をしかと物語っている。

これまでも終戦直後の混乱期を描いた小説や映画は数多くある。
単純に「戦争が終わったから平和になって良かった」とは言えないのだ。そこから始まる地獄がある。
一部には商売に成功して儲けた人もいただろう。しかし多くの人々は、家族や家や財産を失い、ゼロどころかマイナスから日々の暮らしを築き上げなければならなかった。そして、失ったものの代わりに、消えない深い心の傷を負わされて…。

子役の眼が凄い。この撮影がトラウマになっていなければいいと思うほどのリアリティだった。