Hara

ほかげのHaraのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
4.2
先日観た「ゴジラ-1.0」の戦後は復興に向けての明るい戦後だったが、これはマジで暗い、辛い戦後。

映画としてのジャンルが違う為どちらがいいとかはないし、比べるべきものじゃないがこれがほんとの戦後だったんだろうな。

夫、子どもを亡くし抜け殻の様に身体を売り、そして病気に、おそらく性病になってしまう趣里。
家族を無くし盗む事で生きている坊や。
戦争での悲惨な体験で精神が崩壊してしまった元教師。
そして戦場での上官の不条理な命令を許せず復讐する事に縋る森山未來。

みんな役名もない、力も権力もない普通の人たち。
戦争によって人生を失ってしまった人たち。
終盤で出て来た廃墟に溜まっていた復員兵達もそう。

みんなそんな人生じゃなかったはず。

だけどラスト、闇市で逞しく生きて行く人たち。
そこで趣里の言い付けを守り盗む事も危ない事も止め必死に働こうとする坊や。
何回も放り投げられながらもお皿を洗おうとする坊や。
そしてその仕事で貰った一杯のうどん、くしゃくしゃのお札。

「これで病気治る?」

趣里の為に買おうとした暖かい食事と女性ものの服。
坊やは市井の人混みに消えてしまったが灯りの刺すラスト。

趣里の影の中での目力、坊やの真っ直ぐな眼差し。

ほかげ。

坊やの灯りが3人の影をより鮮明にしていた様な気がする。

辛い、暗い映画だが観て良かったと思う映画だった。
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