コムギ

映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)のコムギのレビュー・感想・評価

-
丁寧な導入と伏線回収にきれいなオチ。かつての大長編っぽさがある脚本がすごくよかった。
物語やテーマの根幹にSF要素ががっつり絡んでくるのも藤子・F・不二雄へのリスペクトを感じる。 価値観の逆転が起こった時のクラクラするような感動、センス・オブ・ワンダー。 こういうのが見たかったんだよ!

のび太の“の”の音に象徴されてるけど、音楽は上手にできなくてもいいんだっていうメッセージを描けていたのがすごく良くて。音を出すことの原初的な喜び、誰かと演奏することの楽しさがまずは大事なんだよね。そこを伝えるために全力で振り切ってるアニメーション表現や音響演出も素晴らしかった。

もちろんそこだけで終わってなくて、「うまくなりたい」という気持ちも大事にしてくれててよかった。いつもの日常から飛び出し、非日常の冒険を経て戻ってきた日常は以前と何も変わっていないなんてことはなく、ちゃんとのび太は成長してるんだよね。
だからあのエンドはすごくいい。お手本のようなジュブナイルSF。

ただ、そのテーマを描くための物語の積み重ねは丁寧すぎたのかなぁという印象。中盤の中弛みは気になってしまった。言葉に頼らずに音楽の楽しさを描くというのは難しい試みではあると思うけど、もう少し尺が短かったらもっとよかった。
ほかにもゲストキャラの扱いとか気になるところはあるけど、この突き抜けた歪さが好き。
大傑作!
コムギ

コムギ