ブルームーン男爵

ダム・マネー ウォール街を狙え!のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

3.9
想像以上に面白い金融エンターテインメント!

ネット掲示板に集った個人投資家たちが、ゲームストップ社(ゲームソフトの実店舗の小売り企業)の株をこぞって買いまくったことで価格を上げ、同社を標的に「空売り」を仕掛けていたヘッジファンドに大損害を与えた実際の事件をベースにした映画。映画のタッチが映画「ソーシャルネットワーク」っぽい。ちなみに、タイトルの「Dumb Money」の「Dumb」は、「愚かな」とか「バカな」という意味である。

ウォール街の強欲な富豪エリート集団が金融を支配する米国にあって、庶民がSNSを通して一致団結して、投資ファンドにしっぺ返しをくらわせるのは痛快である。本作を通してSNS時代の投資環境の変化や、アメリカのとんでもない経済格差や、社会的に重要ながら安く使われる医療従事者などアメリカに内在する社会問題をあぶりだしている。この事件を契機に空売りが減ったというから、SNS時代の庶民の連帯が、強欲なウォール街を動かしたという点で、画期的だった。

主人公キースも実在の人物であるし、議会の公聴会のシーンについては国会議員のシーンは実際の映像を使用しているなど、リアルな描写が多く、うまくコミカルなタッチでまとめている。105分ながらかなり満足度が高い作品だったので、金融やら投資に興味ある人におすすめしたい。なお、「マネーボール」「ウォール街」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「国家が破産する日」「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」「キャピタリズム」「マネー・ショート」「マネーモンスター」など結構、金融関連の映画/ドキュメンタリーあるのであわせての視聴をおすすめしたい。

(補足)「空売り」が何か分からないと、本作は理解できないが難しい話ではない。空売りとは、証券会社から株式を借りて、それを売却し、株式を返却する段階になったら株を買い戻して、株を返却するというものである。例えば、100株を借りてきて100万円で売却し、その後、株が値下がりし、100株を80万円で買い戻し、株を返却する。こうすると売却100万円で、80万で買い戻すので20万円の利益となる(税金や手数料は別途かかる)。株が下がることに賭ける投資手法である。逆に株が上がってしまうと、買い戻すコストが上昇するので損を被ってしまう。本作では個人投資家が株価を上昇させたのでヘッジファンドが損害をうけたということである。