このレビューはネタバレを含みます
「これは本音で答えて欲しいんですけど…ここにいる障害者たちって幸せだと思います?」
相模原障害者施設殺傷事件をモデルにした映画。単純な猟奇殺人ものではなく、「障害者を生かすことは必要なのか?」というテーマを、犯人側の目線も交えて強烈に問いかける。徐々に狂っていく磯村勇斗がとにかく怖い。
犯人の"さとくん"がシンプルに優生思想の持ち主かと思いきやそうではなく、彼の中で「心があるか否か(会話ができるか否か)」というのが基準で、現実に彼には聾唖者の彼女がいる。心がある者には危害を加えないし、あくまで心のない、生かす必要のない者だけを狙ったのがポイント。劇中でも束縛した二階堂ふみを連れ、「こいつは喋れる?」ということを殺す前に必ず確認する。彼には彼なりの理があり、彼の問いかけはおそらくこの映画を見た人の間でも賛否が分かれると思う。ある意味プロパガンダ映画なので、それがめちゃくちゃ怖い。
ただ、これまで日本社会の中で隠蔽されてきた事実を大きく暴いた作品であり、間違いなく今の日本に必要な映画。自分の中の倫理観がリトマス試験紙のように色分けされる作品でもある。
あまり本筋とは関係ないが、宮沢りえ、オダギリジョー、二階堂ふみ、磯村勇斗による地獄の宅飲みも見られるのでそこにも注目。
以下、セリフメモ。
「でも…頑張って生き続けて意味ある?」
(息子の墓の前で妊娠を知り)「ごめんもう限界…。やったー!!やったー!!!」
「子供ができてどうでした?堕ろしたんでしたっけ?…すみません。酔ってます」
「ずっと嘘をつき続けてきて…私、もうボロボロに壊れてるんです」
「きーちゃんには見えてる?子供を失ってから、私には何も見えなくなっちゃったよ」
「紙芝居を捨てなきゃいけなくなっちゃって…。きーちゃんに月を作ったんです。バカみたいですよね」
「でも洋子さんもお腹の子供が普通だったらって思ったでしょ?自分の家族にきーちゃんが欲しいと思いますか?綺麗事だけ並べて、矢面に立たないのは卑怯ですよ」
「あいつらは人間じゃないからいらないんです」
「だから僕は殺す前に確認しますよ。"心ありますか?"って」
「僕は自分の存在意義をかけてやるんです」
「あいつは教師にでもなってずっと絵を描き続けるべきだったんすよ。ヒトラーも絵を描いてる間は平和主義者だったっていうし」
「ろっろろろろーろ。ろっろろろろーろ。これを毎日何時間も聞かされて正気でいられます?」
「俺の息子も3歳まで話すことができなかったよ。俺の息子には心がないのか?お前は生きるってことをナメてる!」
「フランスの…ものすごく小さな映画祭なんだけどね。俺…賞をとった。回転寿司は好きなだけで食べていいよ。賞金5万円だけど」
「俺ね、今日障害者たちを殺すよ。日本の平和のために」
≪二人で良い人生を送りたい≫
「私も…あなたのことが…好きです」