きょん

月のきょんのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.5
とても考えさせられる、そして自分自身にも他人事どころか自らのことでもある作品だった。

精神障害者の方々の支援の仕事をしている自分にとって観るべき、というより観たいと思って行ったのだが、逆に自分とも向き合う結果となった。

初め、観た直後は堂島夫妻の設定は必要だったのかと疑問に思っていた。逆に邪魔なくらいではないかと。しかし、それは全く分かっていなかった。そういう意図があったのだとパンフレットを読んで納得しました。石井裕也監督、そこまで読めずすみませんでしたm(_ _)m

障害者施設で働くさとくん役の磯村勇斗、とてもよかった。というか、植村聡もといさとくん役を演じるのはとても勇気がいることだったと思う。それを演じた上に、お見事すぎる演技で、圧巻でした。その彼女役の聾者でもある長井恵理もとても素晴らしかった。少しの出演だったが、さとくんを愛しているからこそ心配している様がとてもうまく表現されていた。さとくんの同僚、陽子役の二階堂ふみ、もう言うことありません。若いのに(こんな表現失礼かもしれませんが)いろいろな顔を見せてくれる女優さんだと思う。期待以上に魅せてくれた。元売れっ子作家で主役、洋子役の宮沢りえ、覚悟を持って演じているのがひしひしと伝わってきた。そしてオダギリジョー、彼こそこの役を演じるのはとても辛かったのではと思う。昌平の前向きにしている姿がとても痛々しかった。そしてそして高畑淳子、渾身の演技だった。

原作の辺見庸さんのお話では「きーちゃん」目線だったそう。映画では堂島夫妻、陽子が加わった。見せ方も本と映画では違うだろうからよく考えついた発想と思う。石井裕也監督は「川の底からこんにちは」しか観たことありませんが、好きな作品。他の作品も観てみたい、そして原作も読んでみたいと思う。
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