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月のhirobeyのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.4
磯村勇斗くんが凄い。「PLAN75」「波紋」にも出演している。こういう社会的問題をテーマにした作品への出演が多い印象。たまたま自分が観ただけかもしれないが。また、「きのう何食べた?」シリーズのコメディタッチも面白い。ますますの活躍に期待大である。

相模原障害者施設殺傷事件をモチーフに書かれた原作の映画化。石井裕也監督作品。

「意思疎通のできない重度の障害者は不幸かつ社会に不要な存在であるため、重度障害者を安楽死させれば世界平和につながる」という思想の下に、大量殺人を実行した殺人犯"さとくん"を我が郷里の俳優・磯村勇斗が熱演した。よくぞあの役を受けたというコメントを目にしたが全く同感。

受賞歴のある作家堂島洋子を演じた宮沢りえ。出演作を重ねていくうちに、女優としての幅も出てきたなぁと思う。声が聞き取りやすいいい声で、そういう編集もしているのだろうけど、本作にはかえって良過ぎるような、贅沢な印象もあった。

夫のアニメ作家昌平をオダギリ・ジョーが演じた。バチんと殴ったね、ぐーで。返り討ちにあったみたいだけど。何だかそこが印象に残った(笑)ストップモーションアニメの制作って、根気以外の何者でもない。その点でも昌平の人間性に救われた。

重く悩ましいテーマを全編暗いトーンで描いていた。画面がとにかく暗かった。ただ、黒猫や蜘蛛やミミズの描写はホラー味の演出としては、やや定番過ぎか。月と鎌の描写は見事なグロさがあった。

終盤の高畑さんの叫びに震えた。

自分ごととして考えられるのか?と問われているような。出生前診断の問題とは違うと言い切れるのか。殺人は全く理解できないが、自分にとって不要なものは排除するという考えは世の中に存在する。(彼の場合は、世の中にとって。)排除という言葉は刺激的過ぎるかもしれない。距離を取る、離れる、関係を断つ、別れる。これらは日常の中にある。差別、ヘイト、ハラスメントなども根源は同じか。
こういう差別的な問題は、永遠に無くならないのかもしれない。人と人の争いが無くならないのと同じ。

エンドロールの役者の表示は、とてもとてもシンプルだった。
あの字体は個人的に好みだった。
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