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劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100のドントのレビュー・感想・評価

3.6
 2023年。アリガトオオォォォッッッ。★以下長文です 99年から続く心霊ドキュメンタリーの元祖、「ほんとにあった!呪いのビデオ」。その立役者にして初代演出(監督)であり、現在もナレーションとして参加している映画監督・中村義洋が、某ビデオのナレ収録中にボソリと呟いた。「俺、これ観たことあるな……」 24年前に送られてきたものとほぼ同じ映像を掘り下げていくと、異様な真実が浮かび上がってきて……
 24年、完全リアルタイムで追いかけてきた「ほん呪」シリーズがついに100巻、さらに監督が中村義洋、加えてネタとなるのは24年前、3巻あたりを制作中に送られてきたというビデオというのだからもう、ファンとしては感無量としか言いようがない。たとえて言うならエヴァの完結とかアベンジャーズエンドゲームにも似た感慨であろうか。
 いつものほん呪とは違ってこちらの100巻、取り上げるビデオは1本きり、そのビデオや怪異も激コワなものではないし、制作時の紆余曲折も取り込んで蛇行と遠回りの作であるのだが、まぁ何とも面白い。じんわりとしたスリルと怖さ、あと適宜混ざる笑いが効いていて、終始ニコニコしながらとても楽しく観れたのであった。なお心霊ビデオをニコニコしながら観るのは普通の人の感覚ではないので注意してください。
 これ実はなかなか巧みに編まれていて、まず「ほんとにあった!呪いのビデオ」の「ほんとにあった!」ってのは、前年98年にブームとなった『リング』に出てくる「呪いのビデオ」を下敷きにしてるんですね。「あのような『呪いのビデオ』は実在した!」みたいな感じ。1巻の最初のビデオも貞子的なオバケのビデオだし。
 で本作、24年ぶりに再発見された映像に映っているモノは、ある事象に関わる物品ということになっている。これ大元たる『リング』以降の貞子の様々を包括した流れであり、もちろん「感染する呪い」はそのままに、さらにコロナ禍という時事性まで加えて、まさに「24年前に置き去られたビデオがいま甦る」といった因縁に回収されていくのだ。すげー。
 そんな因果因縁のひっついた100巻であるけれどもさほど重苦しくなく、基本的に「こんなことやりたくねぇ」という中村監督のやる気のなさや、おっかぶせられる仕事にシブ~い顔をしつづける現「ほん呪」チーフの藤本の顔芸などで適度に笑いとキャラ立てを挟みつつ進行する。
「俺はほら、今はナレーションだから」「いやぁ俺も、会議とかあって」「ビデオだけ見つけてすぐ帰ろうよ」「しんれいYouTuberじゃないんだから早く帰ろうよ」とか言う中村義洋の逃げ腰ぶりは心霊ドキュメンタリーの責任者とは思えない。言うならこのオッサンがはじめたシリーズでお前がはじめた物語なのにこの態度ですよ。商業映画の世界に行って保守的になったか中村監督!
 軸となるビデオも起きる怪現象もそんなに怖いものではないが、「ヤバいので映像は流しません」「コマだけ切り取ってお見せします」という見せ方と「全部地味ゆえになんかじんわりと怖い」というアプローチで、別角度からの恐怖が付与されて興味を引き立てる。多種多様な取材やインタビュー風景が彩りを添えて飽きさせない。
 さらに本作、考察というほどではないけれど、隠された真相というか意図的に放置された謎、違和感というのがあり、『放送禁止』のような面白さも有している。書くと野暮だけれどアレですね、誰があの映像を投稿者に送ったのか、とか……。最後のスタッフの微妙な表情とか……。
 まとめると、古きよき心霊ドキュメンタリーと、過去の総決算と、ちょっと考える余地があるという現代性とを持ち合わせた、ものすごく楽しめる記念作であった。繰り返しますが心霊ビデオを「楽しめる」とか言うのは異常者なので、私の感想は話半分に聞いてください。楽しいのかァと思って観て具合が悪くなっても責任は持てません。その点、おわかりいただけただろうか……
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