ブルームーン男爵

ザ・クリエイター/創造者のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
3.8
最近のSF映画は原作があることが多いが、本作は監督のオリジナルのSF映画。思ったより全然面白かったけれども、既視感溢れる映像やら設定だらけ。そして時代も地域も異なるいろんな作品(「攻殻機動隊」「アキラ」「ブレードランナー」「スター・ウォーズ」「アバター」「地獄の黙示録」)の影響を受けているせいもあり、世界観がややゴチャゴチャ。

AIの暴走なんだから「人類 vs AI」になるかと思いきや、なぜかAIを殲滅したいアメリカ(西洋諸国)と、AI擁護派のニューアジア(東南アジアや日本)の戦争になっており、そして、徹底してアメリカが悪く描かれているのが特徴。さすがに「アメリカ vs ニューアジア」への転換が強引なうえ、AIロボットも登場するので、だれがどっちの味方なのか分かりにくい。

近未来が舞台でAIも発達しているのに、なぜか違和感出まくりなほど後進的なアジアの農村とかの描き方が差別的との意見もあるものの、わざわざそう描写してアメリカのベトナム戦争での悪行を批判しているようにみえる。日本もやたら登場するが、監督は日本好きで本作も「攻殻機動隊」「AKIRA」「ブレードランナー」からインスピレーションを得ていると公言しているぐらいなので、日本の登場が多いのは納得できるが、一方で、強力な爆弾で攻撃するアメリカを、原子爆弾の被爆国の日本を登場させることで、アメリカを批判したかったのではないかと思う。

独善的にAIを排斥するために、AIと共存しようとするニューアジアを圧倒的軍事力で蹂躙するアメリカへの批判が、映画全編を通して通奏低音になっている。

とはいえ、総合的にみると、細かい点を気にしなければ(ロボット耐久性無くて弱過ぎ、AIこんな発達しているのにそのほかの技術が遅れ過ぎ、主人公は軍人なのに自分勝手過ぎとか)、結構映像的にも迫力があって面白かったと思う - 若干冗長な個所もあり眠たくなってしまったのも事実であるが。まぁ、私はSF好きだし、本作のような雰囲気が好きなので、どれもご愛敬って感じでした。