みーやん

ザ・クリエイター/創造者のみーやんのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.0
これは大台4.0でしょう!ギャレスエドワーズ監督はそこまで関心をもって追いかけてるわけではないのですが、オリジナル脚本でこれだけ面白いSFを作りきるってところは評価・応援しないわけにはいかないですし、ジョンデビッドワシントンもジェンマチャンも好きな俳優だし、SFアクションエンターテイメントながらいろいろ考えさせられるところあるし。

とか言いながら予告編を劇場で初めて観た時には「ハイハイまたこういうターミネーターの角度を変えた焼き直しみたいな人間対機械のアレね、よくこんなの今どきわざわざ作ろうと思うよな」ぐらいの印象だったのです。告白してしまいますが。ごめんなさい。なのですが公開されてみたらそれどころじゃない面白さっていう評価があちこちから聞こえてきまして、とくに宇野維正さんのムービードライバーで「ハイハイそういうやつねって思ってたら全部ひっくり返されるから」っていう表現を交えて激賞されていて、それだったら観てみないとなと転向したわけです。都会ではまだやってるのかもしれませんが田舎シネコンでは2週間で上映が終わってしまうようで、最終日の最終回に滑り込んできました。まあ自分ふくめて2人しかお客さんいなかったので、上映期間が短いのもやむなしかなとは思いましたけどね。でもなんかもったいないなーという気持ちはやっぱりありました。

ストーリーも直線的な主人公たちの逃避行からの反撃っていうだけではなく細かい変化があってずっとどうなるのかハラハラさせられっぱなしで、いやーよくできてるなー面白いなーと感心しながら観ていました。映像もメカ描写はもちろん、SF的な造形とアジアっぽいスケールの大きい風景やアナログかつ猥雑な暮らしの風景との組み合わせ方も新鮮でしたしね。ブレードランナー以降まだまだこういう「キレイじゃないほうの未来描写」って進化できるんだなーというセンスオブワンダーでいっぱいでした。

あとSFだアクションだを観る時にはラブストーリー的側面ってわりとどうでもいいというか、下手するとあんまりそっち要素多すぎると面白くないんですけどぐらいに感じる偏った感性の持ち主なのですが(マトリックスとか、好きなシリーズですけどネオがずっとトリニティーに執着しすぎてうっとおしいなあとうんざりしてました)、今作の主役二人の恋愛模様はいいですね!めっちゃいいです!うおっそんなことになるのか!と思わせておいてうわー!またそこでそんなことに!というラストの着地。ひとつ前に書いたミッション8ミニッツのオチとか、この作品と比べるとやっぱり古いというか当時はそういうのが良しとされてたんでしょうねーと感じざるを得ませんね。

あとなんといっても、AIがどうとかテクノロジーがどうとかっていうもっと根っこの話として、他者とともに理解とリスペクトをもって生きていくことについての話なんだと思いました。ウクライナやパレスチナで起こっていること、そして日本でもすすむ不寛容と分断・力で解決するのを是とする声の高まり、そういったことに切り返してくる内容だと思います。そのあたりをしっかり照射しながらエンタメとして面白くフレッシュであること、これを両立できるのがSFなのかもしれませんね。まだ公開してるエリアにお住まいであればぜひ劇場で観ていただきたいです!
みーやん

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