ドント

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズのドントのレビュー・感想・評価

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 2023年。これは、どうなのかな。どうですかね? 父母を失い、ひとりで妹を育てようとしている青年、カネ目当ての叔母に養育権を奪われそうになり、とりあえず働くフリでもせにゃ、と応募したバイトは廃業したチャチい遊戯場の警備員だった。働きはじめて初日から、妙な気配が……特にあの電動ぬいぐるみが変だ……
 ゲームが原作のお化け屋敷的マイルドホラーといった品で、実際お化け屋敷だし人が死ぬ。年にたくさんホラーをキメている者からすると「純トロじゃねぇと効かねぇンだよなぁ」と不満が浮かぶもののこれ、こっちが中毒者だからであって、たとえば『学校の怪談』とか『死霊高校』とか『コンジアム』みたいなですね、よくできて刺激や恐怖も少ない、ホラー入門みたいな代物だと思えば文句を書き連ねるのも野暮かと思う。
 しかしながら。やっぱりこれって薄味すぎやしないかね? とも思う。先に挙げた3本と比べても、ビックリも含めた恐怖の味わいが相当に薄い。電動ぬいぐるみを怖くしろというのは無理難題と言えばそうだけど、それにしても一番怖いのは三角帽子の人形ってのはアナタ、ホラーとして寂しいじゃないですか。ぬいぐるみはかわいいけども。あと細部のツメが徹底的に甘い。どうにも「こんくらいでしょ」感が全体から漂ってくる。
 そもそも怖いシーンが少ない。7割くらいがヒューマンドラマ(?)に当てられているのではなかろうか。ドラマパートそのものは悪くないとは言え、ちょっとアレね、説明や辻褄合わせの感じは、ダメな邦画に似ている気がする。ブラムハウスゆえつまらなくはないのだけど、やはり人の成長譚よりかはぬいぐるみの恐怖や大暴れ大殺戮を目撃したいわけであってね。腕とか首とかバンバンもげてほしいわけでね。えっダメですか? 人体真っ二つでガマンしろ? そう……
 そんなわけで映像も物語も殺戮もなんの尖ったものもなく、全体にスーッと流れていくかのような出来で、よく言ってベタ、悪く言うとフックのない映画だと感じてしまった。ここまで来て「殺人電動ぬいぐるみのある廃業した遊戯場で一夜を過ごす」というアイデアをゲームからまるっといただいて先に映画にした『ウィリーズ・ワンダーランド』に触れていないのはワザとである。本作をご覧になって「面白かったけど、なんかもっと怖くて刺激的なのが観たいね!」と思ったよい子は『ウィリーズ~』を観てね!
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