ドント

イビルアイのドントのレビュー・感想・評価

イビルアイ(2022年製作の映画)
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 2022年。メキシコの怪童アイザック・エスバンがカナダで映画(『パラレル』)を作って帰国しての凱旋ホラー。体の弱い妹のため母方の祖母に預けられたティーンの姉が、怪奇婆さんにいじめられるしお手伝いさんの語る昔話は怖いし妹の具合はよくないしで困っていると恐ろしい目に遭う。
「えっ、正気か?」みたいなアイデアやストーリーを、若干の脇の甘さを見せつつ正面から描くエスバンの魅力が戻ってきた映画であった。あと最後は長いナレーションで終わらせるスタイルとか。ただ本作、『パラドクス』『ダークレイン』のような代物ではなく謂わばお伽噺なので「正気か?」度合いは低い。お伽噺は何でもアリなので。
 都会のマンションから森の奥にある祖母のお屋敷に入っていく流れは、屋敷の雰囲気や色合いもあいまってまさにお伽噺で、ババアの性悪な感じもまたお伽噺。ここでキッチリとダークテイル感を作り上げれば重厚で忌まわしい作品になろうが、夢とか幻想とか「目覚め」とかを詰め込んだ上にポケモンショック地下室だの変態プレイカップルだのを差し挟むのでどことなくスキができる。脇が甘い。でもそのへんが好き。
 そもそもお伽噺の一部は「こういう」意味合いも含有しているわけであるが、それを現代に持ち出して現代っ子に背負わせるというのはなかなか攻めていると思う。我々は神話や童話のような旧弊的な感覚からそう簡単には抜けられないのだ、これは呪いのようなものだ、と言うような。けどやはりどこか軽くて、「あっ、そこはそういうのでいいんだ……」と感じたりもする。急に魔女が出て「眠れ!!!!」って叫んだら寝ちゃったり。そんなんアリかよ、と思う。
 しかしまぁ、そういう作風の人なので許してほしい。自分の中ではシャマランと同じ、「あんたがそうなら俺もついてくよ」と書かれた箱に入っている。方向性や思想性はまるで違えども、映画的ハッタリで異常現象を呑み込ませるやり口が似ていると思うからである。エグいようでエグくないけどやっぱりエグみのある、変な映画です。
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